SDGsがひらくビジネス新時代

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SDGsがひらくビジネス新時代
出版社
出版日
2021年09月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

今、すべてのビジネスパーソンにとって必要な観点とは何か。答えはさまざまあるだろうが、SDGsがそれらのうち最も重要なものの一つであることは間違いない。

SDGsとは、「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)の略称だ。環境、人権、ジェンダー、貧困、格差などといった社会課題を17の目標にまとめたもので、2015年に国連で採択された。

本書の著者であるハフポスト日本版の前編集長、竹下隆一郎氏は、こう言う。「1990年代の後半、インターネットによって世界は変わる、と言われた。あれから20年。今度は、SDGsが、ビジネスの新しい時代をひらくのである」と。

本書で竹下氏が語るのは、「なぜSDGsが今、広がっているのか」ということだ。SNSというキーワードを軸に、一人ひとりの個人的な思いや価値観が世界を動かす「SNS時代」の現状を丁寧に説明してくれている。

多くのエピソードが盛り込まれているのも、本書の特徴だ。大学院生である能條桃子さんらが三菱商事などに公開質問状を送った事例、ツイッターで巻き起こった「冷凍餃子」論争、トラウデン直美さんの発言とそれに対する批判……。非常に内容が濃く、「ビジネス新時代」について本質的な理解ができること請け合いだ。

ある意味、本書は、現代における「アイデンティティ」を論じた思想書と言えるかもしれない。読む前と読んだ後では確実に世界の見え方が変わる、多くの方におすすめしたい一冊だ。

ライター画像
たばたま

著者

竹下隆一郎(たけした りゅういちろう)
PIVOT執行役員、チーフSDGsエディター。1979年生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2002年に朝日新聞社に入社。ビジネスや経済官庁の動きを取材する経済部記者、デジタルメディアの新規事業を担う「メディアラボ」を経て、2014〜15年にスタンフォード大学客員研究員。朝日新聞社を退職し、2016年から外資系ネットメディア「ハフィントンポスト日本版」編集長。21年にハフポストを退職。東洋経済オンラインやNewsPicksの編集長を務めた佐々木紀彦氏らとともに、経済コンテンツサービスを展開するスタートアップ「PIVOT」の創業メンバーに。世界経済フォーラム(ダボス会議)・メディアリーダー、TBS系『サンデーモーニング』コメンテーター。

本書の要点

  • 要点
    1
    SDGsの目標が広まったのは、SNS的な社会によって誰もが「きれいごと」を言いやすくなったからだ。その結果、市民の声が、投資家や企業を動かすようになっている。
  • 要点
    2
    社会問題に声を上げる「SDGs市民」は、自分の行動や思いをSNSで発信して他の人を巻き込み、社会にうねりを生み出す。
  • 要点
    3
    SDGs時代の消費者たちは、自らが「正しい」と思うものにお金を払う。スーパーで食料品を買う際にも「おいしさ」だけでなく「正しさ」が判断基準となる。

要約

SNS社会とSDGs

SDGsが広まった理由

著者はSDGsのことを知ったとき、校長先生の “朝礼のあいさつ”のようだと思った。「貧困をなくそう」(目標1)、「飢餓をゼロに」(目標2)、「質の高い教育をみんなに」(目標4)、「海の豊かさを守ろう」(目標14)、「平和と公正をすべての人に」(目標16)など、どれも当たり前で、反対意見など出るはずもないものばかりだ。きれいごとのように感じられ、心に響かなかった。

この印象が変わったのは、少し時間がたってからのことだ。「当たり前で、誰も反対しないこと」なのにいまだに解決されていないのはなぜだろうという疑問が湧いてきたのだ。それと同時に、「これまで問題を放置してきた政府やメディア、民間企業が一斉に『SDGs』を唱えるようになったのはなぜなのだろう?」と思うようになった。

この疑問を解くカギとなるのは、SNSだ。熱意や希望、願望、世の中のダメなところやドロドロした感情……SNSは、こうしたさまざまな思いを、普通の人が率直に語る場として機能し、少し子どもっぽいピュアな投稿が好まれる傾向がある。SDGsの17の目標が広まったのは、SNS的な社会によって「きれいごと」を言いやすくなったからだろう。それが著者の結論だ。

SNS時代の投資とSDGs
oatawa/gettyimages

SDGsと切っても切れない関係にあるのが「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」だ。ESG投資は、今や世界の投資マネーの3分の1を占めているとされている。要するに、投資家が「社会課題に取り組む企業」を評価するようになったということだ。

SNS社会において、社会課題に配慮した新しいビジネスや取り組みの評判は、ネットを通じてあっという間に広がっていく。そして市民の価値観が投資に影響を及ぼし、企業をも動かす。SNS社会ならではの動きである。

【必読ポイント!】 SDGs時代の「企業」と「個人」

「SDGs市民」からの無限の視線

現代社会においては、スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんのような人が自らのアイデンティティを賭けて、SNSで声を上げる。若者であろうがシニアであろうが、企業の商品やサービス、価値観に対する意見を発信する時代がやってきている。

本書では、声を上げる人たちを「SDGs時代の市民(以下、SDGs市民)」と位置づけ、これからの企業と個人の関係を考えるうえで重要な2つのポイントを挙げる。

1つ目は、SDGs市民たちが企業に向ける視線が「無限である」ということだ。これまで企業に向けられる視線といえば、株主・メディア・消費者団体のものに限られていた。だがSNSの普及によって、市民たちの視線が可視化された。差別的な表現が含まれるCMを流せば、スマートフォンで録画され、あっという間に国内外へ拡散されて炎上するとともに、視線が無限に増殖していく。

2つ目は、無限の視線を注ぐ「SDGs市民」がどこの誰で、いつ、いかにして声を上げるのかがわからないことだ。企業側からすれば、SDGs市民たちは不気味な存在だといえよう。

発信者は、意見とともに自分の内面や価値観を明らかにすることで、そうした発信が自らのアイデンティティを賭けたアクションであることを伝える。「社会課題を解決したい」というSDGs市民たちの思いが共感を呼び、さらなるパワーを生んでいる。

SDGs市民が社会を動かす
tadamichi/gettyimages

SDGs市民の一人として、23歳の大学院生、能條桃子(のうじょうももこ)さんを取り上げよう。

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要約公開日 2022.01.04
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