なにもかもどうでもいい。頑張りたいけどもう頑張れない。そんな感覚が続いているとしたら、それはもしかすると「燃え尽き症候群」かもしれない。別名「バーンアウト」とも呼ばれ、仕事などを頑張ってきた人が、まるで火が消えたかのように、仕事への意欲・関心を失ってしまう状態のことを指す。最近は、職種や性別、世代にかかわらず、燃え尽き症候群が増えている。
その一因には、高度に情報化した社会で、24時間人とつながるようになり、対人ストレスが増えていることがあげられる。コロナ禍による働き方や生活の急変に伴い、今後もさらに増えていく可能性がある。
燃え尽き症候群自体は病気ではないが、うつ病などのメンタル疾患の発症のきっかけになることは珍しくない。「燃え尽きなのかも?」と気づいた時点で対策することが重要だ。
燃え尽き症候群とは、アメリカの精神心理学者ハーバート・フロイデンバーガーが1970年代に使い始めた用語だ。2022年に世界保健機関(WHO)が発行した、国際的なガイドラインである「ICD- 11(国際疾病分類第11改訂版)」には、「健康状態に影響を与える要因」の「雇用や失業に関する問題」のひとつとして、燃え尽き症候群が盛り込まれている。特徴は、(1)エネルギーが枯渇するか、または消耗したという感覚、(2)仕事への忌避感の増加、または仕事に関する否定的ないし冷笑的な感情、(3)能率の低下の3つであると説明される。
ICD-11では、燃え尽き症候群は病気や障害ではなく、状態や現象として扱われている。しかし、放置すればメンタル疾患につながる可能性は否定できない。産業医として働いてきた著者は、職場でメンタル疾患を発症する人の多くに「燃え尽き」があるのを感じていた。燃え尽きから休職や離職につながったり、人間関係が悪化して孤立したりすることもある。
食欲の低下や睡眠障害といった身体面の症状、遅刻や早退の増加、パフォーマンスの低下、投げやりな態度などの生活面・社会面の変化が続いているときは、「もしかして燃え尽きかも?」と疑うことで、早めに改善・予防することができるようになるだろう。
焚き火の火が燃えるためには、「火種」と「薪」、そして酸素などの「環境」が必要だ。同様に、「仕事を頑張れている状態=燃えている状態」であり続けるためには、頑張る理由である「火種」、火を保つための行動やペース配分である「薪」、人間関係や業務負荷といった「環境」のバランスがとれていなければならない。
燃え尽き症候群には大きく分けて3つのタイプがある。
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