「不安」はやっかいな感情だ。振り込め詐欺にだまされてしまうのも、ブラック企業で理不尽な働き方に苦しんでしまうのも、「不安」という感情が関係している。他の感情に比べ、「不安」が人生にもたらすダメージは大きい。
2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな社会混乱が生じた。コロナ不安から病院での受診を控える動きがあり、持病の悪化や重大な疾病が見逃される事態が発生している。コロナへの不安だけが強くなった結果、その他のリスクが軽視されてしまっている状態だ。
まずは冷静になり、本当に不安に思うべきことは何かを見極め、適切な行動を見つけることが肝心だ。精神科医である森田正馬は、この発想を精神療法の分野で提唱し、森田療法を創設した。森田療法では、なくしたいと考えるほど不安は増幅すると考える。したがって、不安感情をコントロールするのではなく、不安感情に対する態度や行動に注目し、それを治すというアプローチを取る。そのために本来の目標が何かを考えていく。
たとえば、顔が赤くなることに悩んでいる人は、顔が赤くなることそのものではなく、顔が赤くなることによって人に嫌われてしまうことに悩んでいるかもしれない。ならば、顔が赤くなるのを治す方法ではなく、人に好かれる方法を考えるべきだ。このように、本来の目標がわかれば、その目標を達成するための方法を探し、行動することができる。
世の中のほとんどすべての人が何らかの不安を抱えている。しかし、むやみに不安な気持ちを恐れる必要はない。不安は、正しく向き合えば仕事や勉強の動機づけにもなる。
森田療法では、人が不安になるのは「生の欲望」があるからだと考える。たとえば、人に嫌われるのが不安な人は「人に好かれたい」という生の欲望を持っている。「人に好かれたい」と思わない人は対人関係に不安など持たないのだ。「人に嫌われるのが怖い」と思うのは、「人に好かれたい」という欲望が強いからこそだ。ならば、生の欲望を活かす生き方を目指すべきだろう。
成功している経営者の多くも日々不安を抱えている。しかし、その不安を自覚した上でエネルギーに変え、日々大きな決断を下しているのだ。
不安に思うときは、なぜ不安なのかを考えてみよう。人間は不安だからこそ、努力できるのだ。
「地下鉄に乗っているときに大地震が起きて閉じ込められたらどうしよう」
「繁華街で通り魔に遭遇するかもしれない」
このような事態を考え、日常的にあれこれ悲観的に考えてしまう人がいる。
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