世界2.0

メタバースの歩き方と創り方
未読
世界2.0
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メタバースの歩き方と創り方
未読
世界2.0
出版社
出版日
2022年03月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

いままさにメタバースのムーブメントが引き起こされようとしている。連日のように「メタバース」という言葉がメディアを賑わせているし、ゲームを通じてメタバース的な世界にどっぷり浸かっているという人も多いだろう。メタバースは、これまでのインターネット革命とも一線を画す、大きな変化を人間にもたらすかもしれない。本書によると、メタバースは「神」の民主化なのだという。神にしかできなかった世界創造の力を人類に開放する。メタバースの本質は自分だけの世界を創ることなのだ。

現実世界と仮想空間が融合した映画『マトリックス』のような世界は、もうすぐそこまで来ているのかもしれない。本書でも、人間の五感が現実だと感じるなら、仮想空間であっても「物理的」だとしている。「神」が民主化されるメタバースの中では、だれでも自由に自分に都合の良い世界を創り、なりたい自分になることこそが現実にとってかわる。その先にあるのはユートピアか、ディストピアか。メタバース時代が到来しつつある今こそ、人類の在りようと向き合う必要性に迫られているのだ。

本書が指摘するように、金儲けを第一と考える資本主義社会は限界を迎え、環境破壊や格差の拡大が問題視されるようになってきた。人々に閉塞感が漂い、現実社会は幸福ではないと感じる人も増えているだろう。資本主義の次の時代では、メタバースはどんな役割を果たすのだろうか。知識がなくても考えるスタートラインに立たせてくれる一冊である。

ライター画像
香川大輔

著者

佐藤航陽(さとう かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学法学部在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8カ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。累計100億円以上の資金調達を実施し、年商200億円規模まで成長させる。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。衛星データから地球全体のデジタルツインを自動生成するAIを開発。現在も「テクノロジーで新しい宇宙を創り出す」ことを目的に研究開発を続けている。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)や「日本を救う起業家ベスト10」に選出される。著書『お金2.0』が20万部を超えるベストセラーとなり、2018年のビジネス書で売上日本一を記録した。

本書の要点

  • 要点
    1
    メタバースとは、インターネット上に作られた3Dの仮想空間のことで、主にゲームを入り口として普及していくことが想定される。
  • 要点
    2
    メタバースが創造する世界とは、視認できるビジュアルとしての「視空間」と、社会的な役割を持つ「生態系」を融合したものである。
  • 要点
    3
    メタバースが多次元的に拡大すると、人間の人格形成にも影響を与える。仮想空間が自己増殖して複雑化すると、一つの巨大な「生命」のような存在になる可能性がある。

要約

メタバースの本質

メタバースとは何か
brightstars/gettyimages

メタバースとは、「インターネット上に作られた3Dの仮想空間」のことだ。すでにでき上がった完成品ではなく、ネット上にログインしたユーザーがアバター(分身)を通じて自由自在に移動したり、世界自体を作り換えたりできる。

最初に注目されたメタバースは、リンデンラボが2003年にリリースした『セカンドライフ』だ。4Gや5Gといった高速回線がなく、大量の情報を瞬間的に処理できないことが1つの原因となって失速した。

『ファイナルファンタジーⅪ』や『あつまれ どうぶつの森』などの登場で、メタバース的なMMORPG(大規模多人数同時参加型オンライン・ロールプレイング・ゲーム)が人々を魅了するようになる。2017年にEpic Gamesがリリースした『Fortnite』では、そのゲーム内の仮想空間を「メタバース」と呼んだ。メタバースは、「世界中の株式市場と世界経済をひっくり返すほどのディープ・インパクトをもたらしつつある」。

コンピュータを軸としたテクノロジーの進化を予測することは、高い確率でできる。ふまえておきたいテクノロジーの本質的な特徴は次の3つだ。

まず、「人間の能力を拡張し、個体だけではできないことを実現可能にしてきた」こと。次に、「人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えていく」こと。さながらコンピュータによる教育である。そして3点目が、テクノロジーは「消費者」、「企業」、「行政」の順で浸透していくことだ。これには意思決定の身軽さが関係している。

一部のギーク(技術オタク)だけが熱狂しているタイミングに参入するのがベストだ。メタバースはまさに今が拡大する時である。しかも、漫画やアニメ、ゲームなどの「コンテンツ大国」である日本は、「人材・知財・文化」の3つすべての観点で他国より有利だ。メタバースは、日本が世界でまた存在感を示すための「ラストチャンス」である。

神の民主化

テクノロジーの役割は、「一部の特権階級だけが独占していた能力を民主化すること」だ。インターネットは情報を流通させる機能を人類全体に開放し、情報を民主化した。クラウドファンディングは「金融」を民主化し、検索エンジンは「知識」を民主化した。

同様に、メタバースは「神」を民主化する。神様だけがもっていたはずの世界を創造する能力を、万人に向けて開放するのだ。もたらされる変化はまさに「革命」である。

メタバースは、ビジネスの側面でも大きな変革をもたらす。社名を「Meta」に変更したFacebookに代表されるように、メタバースに何兆円もの投資がなされ、数十兆円規模の市場規模になるのは不可避だ。バーチャル・ディズニーランドはアトラクションを無限に増やせるし、行列とも無縁である。自分が映画の主人公として冒険できる時代も来るだろう。メタバースは、もはや一時的なバブルではなくなっている。

ゲームとメタバース
scaliger/gettyimages

メタバース革命は、「単なるVR技術の革命」ではなく、「コンピュータの性能」「通信速度」「3DCG(3次元CG)技術」の進化が混ざり合った「インターネットの3次元化」の革命だ。

VRといえばゴーグル型端末を通して体験する3次元バーチャルな空間を指すが、メタバースと呼ばれている『Fortnite』などのゲームに代表されるように、VR端末に対応していないコンテンツも多い。「メタバース=VRゴーグルが必須」とイメージしがちだが、VR端末なしで3D空間を自由に動き回れる。VR端末、VRの最適化より先に、PC・スマホ・ゲーム機による3DCGコンテンツが普及することになるはずだ。

この30年間、「インターネット業界においてニュースやSNSがサービスの入り口であり、ゲームはマネタイズのためのゴール」だった。メタバースでは、ゲームを入り口として、その他のコミュニケーションやビジネスはあとから派生していくことになる。実際に、『Fortnite』では

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要約公開日 2022.05.30
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