メタバースとは、「インターネット上に作られた3Dの仮想空間」のことだ。すでにでき上がった完成品ではなく、ネット上にログインしたユーザーがアバター(分身)を通じて自由自在に移動したり、世界自体を作り換えたりできる。
最初に注目されたメタバースは、リンデンラボが2003年にリリースした『セカンドライフ』だ。4Gや5Gといった高速回線がなく、大量の情報を瞬間的に処理できないことが1つの原因となって失速した。
『ファイナルファンタジーⅪ』や『あつまれ どうぶつの森』などの登場で、メタバース的なMMORPG(大規模多人数同時参加型オンライン・ロールプレイング・ゲーム)が人々を魅了するようになる。2017年にEpic Gamesがリリースした『Fortnite』では、そのゲーム内の仮想空間を「メタバース」と呼んだ。メタバースは、「世界中の株式市場と世界経済をひっくり返すほどのディープ・インパクトをもたらしつつある」。
コンピュータを軸としたテクノロジーの進化を予測することは、高い確率でできる。ふまえておきたいテクノロジーの本質的な特徴は次の3つだ。
まず、「人間の能力を拡張し、個体だけではできないことを実現可能にしてきた」こと。次に、「人間がテクノロジーに合わせて生活スタイルを変えていく」こと。さながらコンピュータによる教育である。そして3点目が、テクノロジーは「消費者」、「企業」、「行政」の順で浸透していくことだ。これには意思決定の身軽さが関係している。
一部のギーク(技術オタク)だけが熱狂しているタイミングに参入するのがベストだ。メタバースはまさに今が拡大する時である。しかも、漫画やアニメ、ゲームなどの「コンテンツ大国」である日本は、「人材・知財・文化」の3つすべての観点で他国より有利だ。メタバースは、日本が世界でまた存在感を示すための「ラストチャンス」である。
テクノロジーの役割は、「一部の特権階級だけが独占していた能力を民主化すること」だ。インターネットは情報を流通させる機能を人類全体に開放し、情報を民主化した。クラウドファンディングは「金融」を民主化し、検索エンジンは「知識」を民主化した。
同様に、メタバースは「神」を民主化する。神様だけがもっていたはずの世界を創造する能力を、万人に向けて開放するのだ。もたらされる変化はまさに「革命」である。
メタバースは、ビジネスの側面でも大きな変革をもたらす。社名を「Meta」に変更したFacebookに代表されるように、メタバースに何兆円もの投資がなされ、数十兆円規模の市場規模になるのは不可避だ。バーチャル・ディズニーランドはアトラクションを無限に増やせるし、行列とも無縁である。自分が映画の主人公として冒険できる時代も来るだろう。メタバースは、もはや一時的なバブルではなくなっている。
メタバース革命は、「単なるVR技術の革命」ではなく、「コンピュータの性能」「通信速度」「3DCG(3次元CG)技術」の進化が混ざり合った「インターネットの3次元化」の革命だ。
VRといえばゴーグル型端末を通して体験する3次元バーチャルな空間を指すが、メタバースと呼ばれている『Fortnite』などのゲームに代表されるように、VR端末に対応していないコンテンツも多い。「メタバース=VRゴーグルが必須」とイメージしがちだが、VR端末なしで3D空間を自由に動き回れる。VR端末、VRの最適化より先に、PC・スマホ・ゲーム機による3DCGコンテンツが普及することになるはずだ。
この30年間、「インターネット業界においてニュースやSNSがサービスの入り口であり、ゲームはマネタイズのためのゴール」だった。メタバースでは、ゲームを入り口として、その他のコミュニケーションやビジネスはあとから派生していくことになる。実際に、『Fortnite』では
3,400冊以上の要約が楽しめる