「メタバース(Metaverse)」は、「超(Meta-)」と「世界(Universe)」を組み合わせた造語で、「現実を超えた世界」といったニュアンスだ。米国のSF小説『スノウ・クラッシュ』(1992)の仮想世界として登場した。仮想世界だが、実際にそこにいるような体験ができ、土地の売買などの経済活動も成り立つ。そんな作中の世界は現在のメタバースの概念とも似ており、影響を受けているVR開発業界の人は多い。
メタバースは2007年、米国リンデンラボ社の仮想空間セカンドライフでも注目された。セカンドライフはアバターで世界中のユーザーとコミュニケーションができ、ゲーム内の通貨を現実のお金に換金できた点が画期的だった。大金を稼ぐユーザーも登場し、約100万人のユーザーがいた。
このセカンドライフを前提とし、日本バーチャルリアリティ学会が2011年に定義した4要件が、メタバースの初期の概念だ。すなわち、①三次元のシミュレーション空間(環境)を持つ(「空間性」)、②自己投射性のためのオブジェクト(アバター)が存在する(「自己同一性」)、③複数のアバターが、同一の三次元空間を共有することができる(「同時接続性」)、④空間内に、オブジェクト(アイテム)を創造することができる(「創造性」)、これら4つである。
セカンドライフの時代と比べ、今はネット環境もPCスペックも進化している。2016年には一般ユーザー向けVRゴーグルが販売され、サービスも開始された。
しかし、メタバースの統一した定義は今も存在しない。なぜならメタバースは進化過程にある概念だからだ。
そこで著者は、日本バーチャルリアリティ学会の4要件(同時接続性は「大規模同時接続性」に変更)に「経済性」「アクセス性」「没入性」の3つを加え、7要件を満たすオンライン仮想空間が、メタバースであると定義した。
メタバースは単なるゲームではなく、現実を超え、人生を送れる新たな生活空間となる。現時点で完全なメタバースは存在しないが、必要最小限のメタバースはソーシャルVRとして既に存在する。
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