人間はさまざまな感情を持つ生き物だ。幸せな体験を嬉しいと感じたり、不愉快な体験に怒りを感じたりするのは当然だ。
感情を表現すること自体は悪いことではない。問題なのは、感情にまかせて問題行動を取ってしまうことである。感情をコントロールできない人は、常に心に不安や怒りを抱えてストレスを溜め込んでいる。それが爆発すれば、問題行動を起こしかねない。怒りにまかせて他人を殴ったり、相手を傷つけるような発言をしたりすれば、人間関係を悪化させ社会生活にも支障をきたしてしまう。
感情をコントロールするとは、感情を持ったときに問題行動を起こさないよう自制することだ。感情をコントロールできると上手に人付き合いができるだけでなく、集中力を持って勉強や仕事に取り組むことができる。結果、人生に大きな差がついてくるのである。
現代アメリカの精神分析学に多大な影響を与えた精神科医コフートは「人は自己愛が満たされていないときに不機嫌になる」と言った。自己愛に満たされていない人は、些細な問題に直面するだけで不機嫌になる。たとえば、少し電車が遅れただけで駅員に食ってかかるというような問題行動を取る。こういった行為は「客である私の方が偉い」と主張しているのと同じだ。相手が謝ることで、自己愛が満たされるのである。
しかし、不機嫌になることで自己愛を満たそうとするのは、リスクが高い。相手を不愉快にさせ、逆に攻撃を受けたり周囲の人からの非難対象になったりするからだ。不機嫌にならないためには、自分が置かれた環境の中で「満たされている」という実感を持つことが重要である。
世の中にはどうしても「虫の好かない人」がいる。顔を見るだけで不愉快になる、バカにされているような気がするというような、苦手意識を持ってしまう相手のことである。
しかし、これは相手ばかりに問題があるとも言えない。実は、不機嫌な人ほど周囲にたくさんの「虫の好かない」人がいる。不機嫌な人は少しでも気に入らないことがあると「この人は私を敵視している」と決めつけ、周囲を虫の好かない人だらけにしてしまう。
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