私たちにネガティブな感情が起きるのは、物事が自分の都合どおりに進まないときだ。たとえば、何かしようとしているところに別のことを頼まれれば、邪魔された気がしてムカッとするだろう。
お釈迦さま以前より、インドではこうした感情を「苦」と呼んでいる。苦をなくす方法は2つある。1つは、都合を叶えることだ。つまり、自分の夢や願い(都合)を叶えようと努力すること。人間の労力を減らしてくれる家電を開発することは、その一例だ。
もう1つは、都合そのものをなくす(減らす)ことである。叶えたい都合がないなら、苦は生まれないからだ。ただし、都合をなくすのは決して簡単なことではない。
苦をなくすために、お釈迦さまは世の中の仕組みを観察した。そこで発見したのが、世の中の「縁起の法則」だ。これは、物事は縁起があって起こるという法則である。
当たり前だと思う人もいるだろう。でも私たちは、この法則を忘れて結果に目をうばわれ、苦を発生させてしまうものなのだ。
「なぜこんなに苦労するんだ」と感じたら、その理由(縁)を考えてみよう。理由の一つは「生きるため」だろう。生きるためには苦労という縁が必要だ。その事実を理解できれば、ネガティブな感情は減っていくに違いない。
どんなことも一つの結果だ。この要約を読んでいることも、いま生きていることも、一つの結果である。膨大な縁が絡み合って結果が導き出されている。
あなたに仲のいい友達がいたとしよう。あなたとその人は「親しい間柄である」というのが最新の結果(状況)だ。その結果になるためには、「2人が生まれた」「お互いに気心を知っている」「共通の時間や空間を共有した」といった「あった縁」が不可欠だ。
加えて、思いもよらない縁もある。それは「2人の仲を裂くような人がいなかった」「別の国で別の時代に生まれなかった」などといった「なかった縁」である。「なかった縁」の数は「あった縁」よりもはるかに多く、数万、数十万に及ぶだろう。自分の親、その親、さらにその親……とさかのぼっていくと、自分がどれほど奇跡的に「いま」「ここ」にあるかがわかるはずだ。
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