なぜ、あの人には何でも話してしまうのか

心理カウンセラーのすごい「聞く技術」
未読
なぜ、あの人には何でも話してしまうのか
なぜ、あの人には何でも話してしまうのか
心理カウンセラーのすごい「聞く技術」
未読
なぜ、あの人には何でも話してしまうのか
出版社
出版日
2022年07月11日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

あなたの周りには、「この人なら何でも相談できる」と思える人はいるだろうか。もしいるなら、その人は一体どのように話を聞いているだろうか。

本書は、心理カウンセラーである著者の視点から、プロの「聞く技術」とその実践方法を書き記したものである。著者によれば、「話をうまく聞けない人は、たいてい頑張って話し過ぎて」いるという。

自分のことを話したい人は多いが、上手に聞ける人は少ない。聞けるということは、信頼され、頼りにされ、仕事が集まるということでもある。だからこそ、会話がうまくいかない、仕事や人間関係がうまくいかないといったとき、あなた自身が「聞ける人」になる。積極的に話せるようになるよりも、成功する可能性が高まるそうだ。

話す中心の会話から、聞く中心への会話へ転換するためには、意識をほんの少し変えればよい。この少しの変化が、自身の人間関係を楽にするだけでなく、周囲の人を救うことにもつながると、著者は書く。カウンセラーに対してだけではなく誰に対しても、人は話したいと思うからだ。

一方で、愚痴の多い同僚や、重い内容の相談などでは、聞いている自分まで精神が擦り減ってしまうことがある。そうならないようにするためのコツもまた「聞く技術」の1つとしてまとめられている。ぜひ注目してお読みいただきたい。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

山根洋士(やまね ひろし)
心のクセを直す「メンタルノイズ」カウンセラー(心理カウンセラー)/一般社団法人メンタルノイズ心理学協会チェアマン(会長)。大阪府出身。早稲田大学中退。両親の離婚、熱中していたスポーツの挫折、就職の失敗などを経て、情報誌編集者からノンフィクションライターとして独立。金銭的な成功をつかむものの、激務のあまり過労死寸前で緊急入院。入院生活で「なんのために生きるのか」を模索し、心理療法を学び始める。心の風邪薬のようなカウンセリングを提供したいという想いからカウンセラーになる。
実践中心のカウンセリングで一線を画し、これまでに8000人以上の悩みを解決。心理学だけでなく、数多くの経営者やスポーツ選手などへの取材経験、AIやロボット工学、脳科学などを取り入れたメンタルノイズメソッドを開発。ビジネス面でも、メンタルノイズ心理学を立ち上げから3年で年商1億円規模に成長させる。
著書『「自己肯定感低めの人」のための本』(アスコム)がメンタル本対象2021優秀賞を受賞。そのほか、『「自己肯定感低めの人」が幸せになるワークブック』(宝島社)、『「自己肯定感低めの人」の人づきあい読本』(大和出版)『「自己肯定感低めの人」が、一生お金に困らない方法』(PHP研究所)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    本書で紹介する聞く技術は、①安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方(受容・共感)、②本音を話してもらう聞き方(自己一致)、③聞き疲れしない方法の3つからなる。
  • 要点
    2
    相手との信頼関係のためには、相手を100%は理解できないことを前提とし、どんな相手からも教えてもらおうとする姿勢を崩さないことが大事だ。
  • 要点
    3
    本音を話してもらうためには、相手の課題は相手のものであることを認識したうえで、相手の自己解決を促す。
  • 要点
    4
    聞き疲れしないためには、話を全部聞こうとせず、感情が乗っているところだけを聞くようにする。

要約

聞く技術

会話の心理的安全性
millann/gettyimages

何でも話してもらえる人に共通する聞き方の秘訣は、受容・共感・自己一致の3つである。受容とは、「相手の価値観や考え方を無条件に受け入れること」、共感とは、「相手の感情を想像して理解すること」、そして自己一致とは、「自分が自分のあるがままでいること」「相手が『自分はこれでいい』と思えるようになること」を指す。会話が苦手と感じている人でも、これらをベースに聞き方を変えれば、相手を動かしたり、心を開かせたり、誰かの悩みをすっきりさせたりすることがある。

まず実践したいのは、「あまり話さないこと」だ。それだけで何か変化が起こる場合もある。

悲しみや怒りなどを吐き出すことですっきりする、「カタルシス効果」は、普段の仕事や人間関係で話を聞く側に回るときにも活かすことができる。誰かとの会話でカタルシスを感じてもらえると、その相手との信頼関係を築きやすくなる。

しかし、親しくもない相手にいきなり何でも打ち明けてもらうのは難しい。そこで、相手が何を言っても、自分の価値観とは関係なく丸ごと受け止め、理解する。そうして「発言の心理的ハードルを下げ、会話の心理的安全性を高める」ことが、聞く技術である。

すぐに使える便利な聞き方として、「そうだよね」「そっか」といった受容の一言を返すことが挙げられる。どこに原因があるかとか、自分ならこうするといった話をする前に、「そうだよね」と受容する。自分の解釈や感情を挟まず素直に受け入れることは、意識しないと難しい。それでも、まず受容することで、言い合いになることもなく、本音を言ってもらえるようになる。

所属欲求

「私たちがうまく聞けないのは、聞くより話すのが好きだから」だ。

人間には本能的に、「知ってもらいたい」「聞いてもらいたい」という「所属欲求」がある。ハーバード大学の社会的認知・情動神経科学研究所の調査では、「自分語りは快楽だ」と発表された。「自分自身のことを話すとき、人の脳は快楽に関する神経領域が活発化する」という。みんな何かを話したい。そういうときに「聞ける人」であることは貴重なことなのだ。

「所属欲求は、人間同士だからこそ満たされる」。言葉が通じないペットや、反応のないぬいぐるみが相手では、「自分の存在を認めてもらっている」という所属欲求を満たせない。自己受容には他者からの受容が必要なのだ。

一方で、聞く側がいかに疲れないようにするかも重要だ。話に入り込み過ぎると、相手の問題が自分の問題のように思えてきて、心にダメージを受けてしまう。聞き疲れしない技術も、聞く技術の1つなのだ。

話を聞けない人のタイプ

メンタルノイズ

話を聞けない人のタイプにはさまざまある。

たとえば、「相手の話に失敗したことやうまくいかないこと、迷っていることなどが出てくると、ついアドバイスしたくなる」のが、「先生タイプ」だ。いいアドバイスをしようとつねに考えているため、相手の話に耳を傾けられなくなる。ほかにも、相手の話の内容が自分の価値観や判断基準と異なっていると口を挟んでしまう「審判タイプ」や、聞かれてもいないことを相手の話を折ってまで説明、確認しようとする「解説者タイプ」、相手によって聞き方が変わる「カメレオンタイプ」などがある。

また、聞けない人の中には「真面目な人」もいる。相手の話をきちんと受け止めようとするあまり、逆に聞けなくなってしまう。その原因は、言葉や行動に無意識に影響を与える心のクセ、「メンタルノイズ」だ。

このノイズにもいろいろある。些細なことにまで完璧を求めるがゆえに堅苦しくなってしまう「完璧主義ノイズ」や、自分自身同様に会話も急かす「タイムイズマネーノイズ」、自分だけでなく相手にもきちんとすることを求める「ちゃんとしなきゃノイズ」などだ。

これらのノイズは真面目な人に強く刻まれている傾向があり、相手を話しづらくさせてしまう。

【必読ポイント!】 信頼関係をつくる話し方

受容と共感
PrathanChorruangsak/gettyimages

本書で紹介している聞く技術は、次の3つである。①安心して話してもらえる信頼関係をつくる聞き方(受容・共感)、②本音を話してもらう聞き方(自己一致)、③聞き疲れしない方法だ。

一つめの「安心して話してもらえる信頼関係」のためには、話し手と聞き手の距離感が大切である。相手が自分の経験を話したとき、寄り添うつもりでつい「わかる」と返してしまいがちだが、他人のことはそう簡単にわかるはずがない。

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要約公開日 2022.08.22
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