ものの見方が変わる 座右の寓話

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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2022年01月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

寓話と聞いて、多くの人はまず、子どもの頃に読んだイソップ寓話を思い浮かべるだろう。「アリとキリギリス」や「北風と太陽」、「キツネとブドウ」が有名だ。

大人になってからじっくり読み直してみると、寓話は重要なメッセージを伝えてくれる、仕事や人生に役立つものであることがわかる。物語の形式をとる寓話は、その中に込められている抽象的な真理をやさしく、飲み込みやすいものにしてくれる。人生のあらゆる場面で、寓話から得た教訓を思い起こすことになるだろう。

本書は古今東西の寓話を紹介するとともに、そこから得られる教訓を解説するものだ。通り一遍の読み方だけでなく、寓話を多面的に解釈しているところも魅力的である。たとえば、「アリとキリギリス」の一般的な教訓は「アリのように勤勉に働くべし」だろう。その一方で「アリは自分だけ豊かになろうとする自己中心的な存在で、将来を憂いて今をないがしろにするという悪い例」という読み方もできると著者はいう。本書を通して、よく知っている寓話を違った角度から読むという、新鮮な経験ができるはずだ。

寓話の解釈にとどまらず、関連する文献を引いて、テーマをさらに掘り下げているのも本書の魅力だ。現代を生きる私たちの身近な問題と結び付けやすく、ちょっとしたスピーチや話題提供などにも役立つだろう。ぜひ寓話を一つひとつ楽しみながら、その教訓を味わってもらいたいと思う。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

戸田智弘(とだ ともひろ)
1960年愛知県生まれ。
北海道大学工学部、法政大学社会学部卒業。
著書に『働く理由』『続・働く理由』『学び続ける理由』(以上、ディスカヴァー)、『海外リタイア生活術』(平凡社新書)、『元気なNPOの育て方』(NHK生活人新書)、『就活の手帳』(あさ出版)、『「自分を変える」読書』(三笠書房)など

本書の要点

  • 要点
    1
    寓話の目的は教訓や真理を伝えることだ。寓話は、抽象的でわかりにくい教訓や真理を受け入れやすいものにする“運搬手段”となっている。
  • 要点
    2
    物事を見る姿勢や態度、立場を変えれば、世の中の見え方も変わる。ある出来事が自分にとっては福であっても、他の誰かにとっては禍かもしれない。逆もまた然りだ。
  • 要点
    3
    全ての人に好かれるのは不可能だ。自分を嫌う人がいるのは、自由に生きている証拠だと考えよう。

要約

寓話を読む

寓話の効能

寓話という言葉を『第六版 新明解国語辞典』(三省堂)で引くと「登場させた動物の対話・行動などに例を借り、深刻な内容を持つ処世訓を印象深く大衆に訴える目的の話」とある。有名なのはイソップ寓話や仏教寓話などだ。本書では何らかの教訓を読みとることができれば寓話であると解釈し、聖書で語られるたとえ話や民話、笑い話なども取り上げている。

寓話の目的は教訓や真理を伝えることであり、物語はそれらを届けてくれる“運搬手段”である。言い換えると、寓話においては教訓や真理こそがその核であり、ストーリーはそれらを包む“外皮”だ。教訓や真理は抽象的でとっつきにくいが、物語は具体的で動きを持っており、わかりやすい。ストーリーの面白さに気をとられているうちに、人間や世界、人生について学べるのである。要約ではいくつかの寓話と、そこから得られる教訓を取り上げる。

視点と視野と視座

泣き婆さん
IanGoodPhotography/gettyimages

南禅寺の門前に「泣き婆さん」と呼ばれる女性がいた。彼女は雨が降っても天気が良くても泣いている。不思議に思った和尚が話を聞くと、彼女には息子が2人おり、それぞれ雪駄(せった)屋と傘屋を営んでいるという。晴れれば傘屋が困り、雨が降れば雪駄屋が困るだろうと考えると、息子がかわいそうでたまらなくなって泣いてしまうのだ。これを聞いた和尚は「わしがひとつ、一生涯うれしく有難く暮らせる方法を教えよう」と次のような話をした。

「禍福はあざなえる縄の如しといって、福も禍もどちらか一方だけが続くものではない。お前は不幸せなほうばかりを考えて幸せのほうを考えていないから、いつも泣いていることになるのだ。天気のいい日は雪駄屋が繁盛し、雨の日は傘屋が繁盛すると考えれば、雨の日も晴れの日もうれしく過ごせるだろう」

それ以来、泣き婆さんは楽しく暮らしたという。

物事を見る姿勢や態度、立場を変えれば、世の中の見え方も変わる。私たちは物事の良し悪しを軽々しく判断してしまいがちだ。しかし、良し悪しは立場によって異なる。ある出来事が自分にとっては福であっても、他の誰かにとっては禍かもしれない。そして逆もまた然りなのである。

山の木と雁

荘子が山を歩いていると、立派な大木があった。木こりたちは「使い道がないから」とその大木を切ろうとしない。荘子はそれを見て、「この大木は役に立たぬおかげで天寿をまっとうできる」と語った。

その後、荘子は友人の家で歓待を受けた。召使いの少年が「よく鳴く雁と鳴かない雁、どちらをつぶして料理しましょうか」と主人に聞くと、鳴けない雁が選ばれた。

大木は役に立たぬから天寿をまっとうし、雁は役に立たぬから殺されてしまった。役に立つことと立たないことと、どちらがいいか。そう少年にたずねられ、荘子はこう答えた。

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要約公開日 2022.09.12
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