脳内科医の著者がクリニックに訪れる人々を見ていると、「もったいない」と思うことがある。なぜなら、必要以上に自分自身のことを「ダメだ」と思い込んで、自信を失っている人が多いからである。
自分の価値を認めて、存在を肯定する感覚を「自己肯定感」と呼ぶ。本来はもっと前向きに生きられるのに、自己肯定感が低いと、過剰に落ち込んでしまう。
脳内科医の視点に立つと、「自分はダメだ」「人よりも能力が低い」と感じるのは、脳の癖が問題になっているのである。脳の仕組みとカラクリを理解して、考え方と行動を変えることで、自己肯定感を築くことができる。
脳の癖によって自分自身を正確に把握できない人は多い。自分自身の価値観や性格、長所と短所を自分自身で認識することを「自己認知」という。
自分自身を正しく判断するためには、自己認知が欠かせない。とはいえ、自己認知は思ったほど簡単ではない。自分自身を見つめるときは、どうしても自分の主観や願望、思い込みが入り込んでしまう。その結果、本来とは異なった自分像を作り上げ、それを自分自身だと錯覚してしまう。
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