大きなものから小さなものまで、人生は「選択と決断」の連続だ。そして、もし自分と他者の選択が合わなければ、話し合いによって決めることになる。わたしたちは毎日、交渉しながら生きているのだ。
交渉はたいてい難航する。成立しないこともしばしばだ。そうした事態を見越して、自分を守るために用意しておく代替案が「BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)=代替案のなかで最良のもの」だ。
人はつい「これしかない思考」に陥りがちだが、BATNAの思考法はその対極にある。BATNA思考を身につければ「AがダメでもBがある」「BがダメでもCがある」と、なにが起きても動揺しない、成熟した人になれる。
注意したいのは「BATNA」と「オプション(選択肢)」の違いだ。「オプション」は「目の前の交渉相手と一緒になにができるか」を前提とする一方、BATNAは、目の前の交渉相手とうまくいかないときに「自分にはどんな最良の道があるか」を考えるものである。
たとえば、Aさんがある骨董品を80万円で買おうとしているが、その骨董品を持つBさんは値段を100万円に設定し、決して譲らないとする。このとき「オプション」では、あくまでBさんから買うことを前提に、お互いの落としどころを考える。それに対して、Bさんから買う以外の方法を考えるのが「BATNA」だ。
BATNAは「ハーバード流交渉術」から生まれた言葉だ。ハーバード流交渉術には「交渉の7つのカギ」と呼ばれる概念があり、「BATNA」や「オプション」はこの中に含まれている。ここでは、7つのカギについて簡単に説明する。
(1)利益
「自分はこの交渉でなにを実現しようとしているのか」を指す。交渉は互いの「利益」の最大化を目指すものだ。
(2)オプション
自分の「利益」を実現するための選択肢のこと。Bさんから骨董品を買おうとしているAさんなら、「別の50万円の品を併せて130万円にしてもらう」というオプションがあり得るかもしれない。
(3)根拠
「オプション」を取る理由。「根拠」を明確にすることで、選択が円滑になる。
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