BATNA

交渉のプロだけが知っている「奥の手」の作り方
未読
BATNA
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交渉のプロだけが知っている「奥の手」の作り方
未読
BATNA
出版社
プレジデント社

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出版日
2022年06月29日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

自分に交渉スキルは必要ない──。そう思い込んでいる人にこそ本書を手に取ってほしい。書名にある「BATNA」とは「代替案のなかで最良のもの」を指す。BATNAを用意して交渉に臨む力は、ビジネスに役立つのはもちろん、先の見えない時代になったいま、予想外の事態に備えるために身につけておきたいスキルである。

本書は明治大学教授の齋藤孝氏と、国際弁護士ランキングで何度も1位に選ばれ、日本交渉学会の会長を務める射手矢好雄氏の共著だ。国内外の最新情報に精通した2人の専門家が、BATNAの基礎から応用までを解説してくれる。平易な言葉で語られているので、交渉論に明るくない人でもすらすら読めるだろう。

齋藤氏が本書で語っているように、進学でも就職でも恋愛でも、「自分にはこの道しかない」と思い込んで生きるのはつらいものだ。一方で「チャンスはいくらでもある」と過信するのも危うい。その点、BATNA思考は「現実的でありながら、希望も持てる」選択のヒントになる。

本書では、BATNA思考の解説にとどまらず、ビジネスシーンや人生の岐路に「BATNA」を応用する方法の解説にもページを割いている。上司から承認を得る、就活を無事に終える、パートナーを見つけるなど、いずれも興味深いものばかりだ。本書を通してBATNA思考を身につければ、壁にぶつかっても最良の選択と決断をし、よりよい人生を送れるだろう。

著者

齋藤孝(さいとう たかし)
1960年、静岡県に生まれる。明治大学文学部教授。東京大学法学部卒業後、同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、現職に至る。『身体感覚を取り戻す』(NHK出版)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞、2002年新語・流行語大賞トップテン、草思社)がシリーズ累計260万部のベストセラーになり日本語ブームをつくった。著者には、『読書力』『コミュニケーション力』『新しい学力』(すべて岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』『話すチカラ』(ともにダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)、『人生を変える「超」会話力』(プレジデント社)、共著書に『心穏やかに。人生100年時代を歩む知恵』(プレジデント社)などがある。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導。テレビ出演も多数。著者累計出版部数は1000万部を超える。

射手矢好雄(いてや よしお)
1956年、大阪府に生まれる。弁護士、ニューヨーク州弁護士。アンダーソン・毛利・友常法律事務所パートナー。一橋大学法科大学院特任教授。京都大学法学部卒業後、ハーバード大学ロースクールを修了し、日本とアメリカ・ニューヨーク州の弁護士資格を有する。2022年度より日本交渉学会の会長を務める。M&A、紛争解決、海外法務を専門とし、中国をはじめインド、タイ、ベトナム、インドネシアなどとの国際ビジネス交渉に従事。日本経済新聞「企業が選ぶ弁護士ランキング国際部門」にて1位を複数回獲得(2010年、14年、17年等)するほか、「Chambers Global」「The Best Lawyers」「Legal 500」「Who’s Who Legal」など多数の受賞歴を持つ。編書に『中国経済六法2022年増補版』(日本国際貿易促進協会)、監修書に『2021/2022 中国投資ハンドブック』(日中経済協会)、齋藤孝氏との共著に『うまくいく人はいつも交渉上手』(講談社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    BATNAとは、交渉における「代替案のなかで最良のもの」だ。BATNA思考を養えば、たった一つの選択肢に固執することなく、成熟した態度を身につけられる。
  • 要点
    2
    交渉においては「利益」「オプション」「根拠」「BATNA」「関係」「コミュニケーション」「合意」の「7つのカギ」が重要である。交渉に臨む前に7つのカギを洗い出し、相手の視点に立って戦略を練ろう。
  • 要点
    3
    BATNAは、上司や取引先との交渉、就職活動、パートナー選びなど、幅広いシーンで役立つ。

要約

【必読ポイント!】 BATNAとはなにか

BATNAの定義

大きなものから小さなものまで、人生は「選択と決断」の連続だ。そして、もし自分と他者の選択が合わなければ、話し合いによって決めることになる。わたしたちは毎日、交渉しながら生きているのだ。

交渉はたいてい難航する。成立しないこともしばしばだ。そうした事態を見越して、自分を守るために用意しておく代替案が「BATNA(Best Alternative To a Negotiated Agreement)=代替案のなかで最良のもの」だ。

人はつい「これしかない思考」に陥りがちだが、BATNAの思考法はその対極にある。BATNA思考を身につければ「AがダメでもBがある」「BがダメでもCがある」と、なにが起きても動揺しない、成熟した人になれる。

「BATNA」と「オプション」の違い
filadendron/gettyimages

注意したいのは「BATNA」と「オプション(選択肢)」の違いだ。「オプション」は「目の前の交渉相手と一緒になにができるか」を前提とする一方、BATNAは、目の前の交渉相手とうまくいかないときに「自分にはどんな最良の道があるか」を考えるものである。

たとえば、Aさんがある骨董品を80万円で買おうとしているが、その骨董品を持つBさんは値段を100万円に設定し、決して譲らないとする。このとき「オプション」では、あくまでBさんから買うことを前提に、お互いの落としどころを考える。それに対して、Bさんから買う以外の方法を考えるのが「BATNA」だ。

交渉を成功させる「7つのカギ」

BATNAは「ハーバード流交渉術」から生まれた言葉だ。ハーバード流交渉術には「交渉の7つのカギ」と呼ばれる概念があり、「BATNA」や「オプション」はこの中に含まれている。ここでは、7つのカギについて簡単に説明する。

(1)利益

「自分はこの交渉でなにを実現しようとしているのか」を指す。交渉は互いの「利益」の最大化を目指すものだ。

(2)オプション

自分の「利益」を実現するための選択肢のこと。Bさんから骨董品を買おうとしているAさんなら、「別の50万円の品を併せて130万円にしてもらう」というオプションがあり得るかもしれない。

(3)根拠

「オプション」を取る理由。「根拠」を明確にすることで、選択が円滑になる。

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要約公開日 2022.09.29
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