1995年、当時24歳だった著者マシュー・サイドは全英卓球トップの座にのぼりつめた。イギリス南西のごく普通の郊外住宅地に生まれた著者が、なぜスポーツの栄冠を射止められたのか。成功したのは類まれなる才能のおかげだったのか。
スポーツの世界は能力主義だと思いたがる人が多いが、それは「能力主義の幻想」である。実のところ、著者には他の何万人もの若者にはない強力な利点があったのだ。子どもの頃に親から卓球台を与えられ、負けず劣らず卓球好きな兄に恵まれた。さらには、小学校の先生に全英卓球協会の要人がいた。その先生のすすめで、全英トップ選手を数多く輩出する「オメガ」というクラブに加入した。著者のような機会を持てた人はごくわずかなのだ。
コラムニストのマルコム・グラッドウェルは『天才!――成功する人々の法則』で次のように述べている。ビル・ゲイツ、ビートルズなどの傑出した人たちの成功は、「彼らがどんな人か」ではなく、「どんな環境の出身か」によるという。彼らは隠れた有利性や機会、文化的遺産から恩恵を受けている。
傑出した技能を可能にする要因は何なのか。心理学者アンダース・エリクソンらは、西ベルリン音楽アカデミーのバイオリニストたちのうち、傑出した学生の集団と、そうでない集団との違いを見つけようとした。まずは学生たちを、最高のバイオリニスト、良いバイオリニスト、そして音楽教師をめざしていて能力的には下位のバイオリニストの3グループに分けた。すると、彼らの経歴は似通っていたのに対し、すさまじく予想外に違っているものがあった。
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