才能の科学

人と組織の可能性を解放し、飛躍的に成長させる方法
未読
才能の科学
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才能の科学
出版社
河出書房新社

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出版日
2022年06月28日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

傑出した成功をもたらすのは才能か、それとも努力か。本書を読むと、この論争の決着がつくかもしれない。スポーツやビジネスの世界で、常人ではまず不可能に見えることを成し遂げるような人々がいる。だが、彼らはすさまじい努力をしている。

本書は世界的ベストセラー作家マシュー・サイドの処女作『非才!』、待望の復刊である。『失敗の科学』、『多様性の科学』の原点にある本と聞くと、一気に期待が高まった。著者は卓球選手としてオリンピックに2度も出場した実績を持ち、スポーツジャーナリストとして数々の「天才と呼べる逸材」を見てきた人物である。

本書の結論はいたって明快だ。この世には、遺伝的に決まる才能はない、すべては努力(と運)で決まる。著者はこの結論を、認知神経科学や心理学の研究結果をもとに明らかにしていく。傑出した成果を出すために必要なものは何か? 人の可能性を引き出すための合理的な学び方とはどのようなものか? 加速習得、目的性訓練、フィードバックループ、成長の気がまえ、二重思考といったキーワードをもとに、「人間の成長法則」に迫っていく。紹介される多種多様な一流の人たちの事例は、読み手の好奇心をかきたてるうえに、著者の主張に深みを与えている。

ビジネス、スポーツ、芸術、学問など、どの分野においても人間の能力は後天的に伸ばせるというメッセージには勇気づけられる。「才能がない」と夢を諦めかけていた方、そして何らかの目標を掲げて高みをめざす方に本書をすすめたい。

ライター画像
松尾美里

著者

マシュー・サイド
作家、英『タイムズ』紙コラムニスト。オックスフォード大学哲学政治経済学部を首席で卒業。卓球選手として活躍し10年近くイングランド1位の座を守った。オリンピックにも2度出場。著書に世界的ベストセラー『失敗の科学』『多様性の科学』他。

本書の要点

  • 要点
    1
    傑出した成功者とそうでない人を分かつ要因は、才能ではなく努力である。
  • 要点
    2
    ある分野で成功するには、累計一万時間の練習が必要である。その際、少しばかり手の届かない目標に向けた、深い集中を伴う「目的性訓練」が重要となる。
  • 要点
    3
    「固定した気がまえ」を持つ人は、失敗を自らの知能のせいにした。一方、「成長の気がまえ」を持つ人は、難しい問題に対しても取り組みの質を維持するか、向上を示した。

要約

成功の隠れた条件

能力主義の幻想

1995年、当時24歳だった著者マシュー・サイドは全英卓球トップの座にのぼりつめた。イギリス南西のごく普通の郊外住宅地に生まれた著者が、なぜスポーツの栄冠を射止められたのか。成功したのは類まれなる才能のおかげだったのか。

スポーツの世界は能力主義だと思いたがる人が多いが、それは「能力主義の幻想」である。実のところ、著者には他の何万人もの若者にはない強力な利点があったのだ。子どもの頃に親から卓球台を与えられ、負けず劣らず卓球好きな兄に恵まれた。さらには、小学校の先生に全英卓球協会の要人がいた。その先生のすすめで、全英トップ選手を数多く輩出する「オメガ」というクラブに加入した。著者のような機会を持てた人はごくわずかなのだ。

最高のバイオリニストとそれ以外を分かつもの
apomares/gettyimages

コラムニストのマルコム・グラッドウェルは『天才!――成功する人々の法則』で次のように述べている。ビル・ゲイツ、ビートルズなどの傑出した人たちの成功は、「彼らがどんな人か」ではなく、「どんな環境の出身か」によるという。彼らは隠れた有利性や機会、文化的遺産から恩恵を受けている。

傑出した技能を可能にする要因は何なのか。心理学者アンダース・エリクソンらは、西ベルリン音楽アカデミーのバイオリニストたちのうち、傑出した学生の集団と、そうでない集団との違いを見つけようとした。まずは学生たちを、最高のバイオリニスト、良いバイオリニスト、そして音楽教師をめざしていて能力的には下位のバイオリニストの3グループに分けた。すると、彼らの経歴は似通っていたのに対し、すさまじく予想外に違っているものがあった。

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要約公開日 2022.10.19
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