生命科学に入る前に、科学を考える基礎となる「科学的思考」について説明する。科学的思考を身につければ、生命科学が理解しやするのはもちろん、自分が行動するうえでの正しい判断基準が得やすくなる。
昔も今も人類最大の敵は病気だ。人類は感染症に善戦しているが、勝つまでには至っていない。新型コロナウイルスの感染拡大に多くの人が困っているが、じつは、専門家もよくわからずに困っているのが実情だ。不確かな状況のときには自分で考えるしかない。そんなとき役立つのが「科学的思考」だ。
科学的思考のベースにあるのが、理屈で考えるという姿勢だ。科学には、「真理をどこまで追求しても、それが本当に正しいかはわからない」という前提がある。真理であるかのように教科書に載っている法則も、「真理っぽい仮説」にすぎない。検証を繰り返しながら仮説をよりよいものにし、真理に近づける営みが科学である。
これを押さえておくだけで、不確かな状況で何かを断言する「専門家」は怪しいと判断できる。新型コロナウイルスは感染拡大が速すぎて「真理に近い仮説」もまだない。私たちは今まさに、いろいろな人が仮説を出し、データが集まり、よりよい仮説になっていく過程を目撃している。このプロセスを知っていれば、不用意にデマに振り回されることはないだろう。
生命の基本は細胞だ。細胞を正しく理解すれば、生命のしくみもおのずとわかる。本書は、細胞を中心に生命科学の基礎から最先端までを解説する。異なる生き物でも、細胞を取り出して見ると形状や機能はほとんど変わらない。
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