科学は、人間の影響で地球は破滅すると警鐘を鳴らす。
しかし、地球全体の気温の変化を把握し、人間の影響度を評価することは簡単なことではない。長期的な変化を捉える必要がある。それにもかかわらず、短期的で特徴的な温度変化だけを切り取ってデータを選り好みする――。そんなことがマスコミでは日常茶飯事だ。
地球の気候システムにとって最も重要で、厄介でもある要素が世界の海洋だ。海は気候の熱の90%を包摂するが、数十年から数百年の単位で変化し、気候変動に影響を与える。
最近の調査では、海洋がこの何十年かの間に暖まっているのは明らかだ。それでは、人間はこの温暖化にどの程度関与しているのか。
一つの手がかりは、人間の影響がごくわずかだった頃の気候を調べることだ。木の年輪や南極の氷床から、過去5億年にわたる気候の変化を捉えることができる。これによると、さまざまな自然要因で気候は大きく変動し、直近の1万年は比較的暖かく安定した気温が続いていることが分かる。
1880年以降の平均地上気温偏差の約1℃の上昇が、人間によるものではないと否定はできない。ただ同時に、地球の地上気温や海洋の熱容量の過去の変化は、気候に強い影響を与える自然要因の存在を示してもいる。人間の影響に対する気候の反応を科学的に特定することは極めて難しいのだ。
それでは、人間はどのように気候に影響を及ぼしているのだろうか。
地球の温度は、太陽光による加熱と宇宙への放射熱による冷却のバランスで決まる。地球は真っ黒ではないため、届いた太陽光の30%は反射するが、このときの反射率を「アルベド」という。天体の外部から入射する光に対する反射光の比だ。
地球のアルベドに基づき、地球がエネルギーバランスを保った状態の「平衡温度」を算出すると、平均地上気温はマイナス18℃になる。しかし、実際の地球の平均気温は15℃である。大気中の温室効果ガスが、赤外線熱をつかまえ、地球表面から宇宙への熱流を妨げ、地球を暖めているのだ。
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