著者の経営する「北の達人コーポレーション」(以下、北の達人)は2020年2月期に売上約100億円、営業利益は約29億円となっており、業界内でも図抜けた営業利益率を誇っている。従業員一人当たり利益は2332万円で、東証一部上場企業の平均値の約7.7倍にも上る。
一般的に、売上は多いほどよいと見なされがちだが、売上が上がれば単純に利益も上がるわけではない。特にネットビジネスはスピードが速く、初期に赤字を出してシェアを獲得し、後で資金回収するというモデルが通用しない。だからこそ、売上と利益をセットで管理する経営方式が肝要だ。
例えば、売上100億円、変動費50億円、固定費47億円、利益3億円のA社と売上10億円、変動費5億円、固定費2億円、利益3億円のB社があったとする。このとき利益は同じ3億円だ。しかし、企業の安定性という観点で比較すれば、B社が圧勝する。
なぜか。例えば、不況などで、A社B社ともに売上が10%下がったとしよう。A社の売上は90億円に下がり、変動費も45億円になる。しかし、固定費は変わらず47億円のままなので、利益はマイナス2億円となってしまう。一方、B社の売上は9億円、変動費は4.5億円に下がるものの、利益はプラス2.5億円となり営業利益率27.8%の高収益を維持できる。
これは同じ利益であれば、売上が少ないほうがリスク耐性が高いということを示している。売上10倍は、リスクもまた10倍高いのだ。
北の達人では、利益とは何か、利益を上げることにはどんな社会的意義があるのかについて共通認識を浸透させるために、社長である著者自ら新入社員研修を行っている。
著者によれば、売上は「お役立ち度の合計を数値化したもの」、利益とは「自分自身が生み出した付加価値分を数値化したもの」だ。
例えば1台10万円のPCを10万台仕入れ、1台10万円で売ったとする。売上は100億円に達するが、利益はゼロだ。つまり売った人が世の中の役に立っていないことを示す。
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