日本に古くからあるBtoB企業は、20年前から「マーケティング」を導入しようとしては失敗を繰り返している。この原因は非常にシンプルだ。「売上」を狙ってきた営業部門が「マーケティング」手法に懐疑的であり、連携がスムーズにいかない組織課題にある。
もともと日本のBtoB企業の営業活動は、つかみどころのないマーケティングよりも人海戦術の方に重きを置いてきた。今でもトップ営業と呼ばれる人ほど足繁く顧客を訪問し、聞いた話は自らの手帳にのみメモする。ここで得られたデータは属人的なものでしかなく、社内の誰にも共有されることはない。
一方、マーケティング側が陥りやすい悪例は、自分たちの部署だけで完結する「やった感のある自己満足の仕事」だ。典型例として「ツール導入」「データ統合」「デザイン刷新」の「自己満三兄弟」の施策が挙げられる。
マーケティングツールを導入する例や、社内に散らばったデータを統合したものの運用されないまま放置される例、あるいはサイトデザイン変更やロゴのリブランディングをしたものの売上に貢献しないといった具合だ。
しかし、そもそもBtoB企業が理想とするマーケティングの導入とはどのような状態なのだろうか。マーケティングの理想形は「顧客視点で顧客に価値を提供できている」状態を指す。その実現には、組織の壁を超え、ピュアな姿勢で価値を生み出し、連続した顧客体験を設計することが必要となる。
マーケティングに本気で取り組むということは、「世直し革命」を起こすようなものだ。広報部、マーケティング部、営業部、カスタマーサポート部、開発部、生産部など縦割りになった組織で顧客視点を貫くことは極めて困難で、途方もなく面倒な社内調整が発生する。そのような「革命」を進めるには、圧倒的な熱量を持った先導者が、少しずつ社内の協力者を巻き込んでいかなければならない。
それには2つのアプローチがある。一つ目は各部門の権限を超越した「トップダウン」による方法だ。CMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)という部門間の権限を超越した役職を立て、部門間の面倒な調整を果断に進めていく。ただ、圧倒的な才に恵まれ、柔と剛を使いこなして組織を動かせるような傑出した人材の確保は、極めて難しい。
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