メタバースという言葉がはじめて使われたのは、『スノウ・クラッシュ』というSF小説だ。
ニール・スティーヴンスンによって1992年に書かれたこの小説では、現実で6×9メートルの狭い部屋に暮らす主人公が、ゴーグルとイヤホンをつけてメタバースの世界に入り込むと、そこには大豪邸を持っている。そしてそこでは地球の円周よりも大きな大通りに、数千万人の人間が常時接続する。
こうした想像力が、現在のメタバースに大きな影響を与えている。VRゴーグルを開発したオキュラスのパルマー・ラッキーも、ペイパル創業者で投資家のピーター・ティールも、グーグル創業者のラリー・ペイジやセルゲイ・ブリンも影響を受けたと公言している、伝説的なSF小説なのだ。
他にも小説や映画、ゲームなど、さまざまなフィクションがメタバース(的な想像力)を描いている。こうした豊かなイメージを現実にしたいという欲望が、メタバースを推進する原動力のひとつであることは間違いないだろう。
一方、『フォートナイト』を擁するエピックゲームズやロブロックス、そしてフェイスブックから社名を変更したメタをはじめとしたさまざまな企業がメタバースの実現を目指すのは、当然ビジネスとして有望な要素があるからだ。
ひとつはメディアへの接触時間である。ネットビジネスはその大半が広告とEコマースだ。そのうち広告ビジネスは、人の注意をひきつけて長く滞在してもらい、多くの広告枠を確保する必要がある。
メタバースは、デジタルで構成された空間の中で生活する社会だ。メタバースの世界では、メディアへの接触時間は、実質的に朝起きて夜寝るまで、覚醒している時間すべてとなる。その点でメタバースは非常に有利だ。
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