そもそもDXとは何か。経済産業省が2018年に発表した「DX推進ガイドライン」の定義をもとにすると、DXとは、継続的に取り組みながら、企業活動に何らかの「変革」をもたらすものである。企業文化や風土まで変革し、競争上の優位性を生み出していくことこそ、DXの本質だ。
しかし、現状を見ると、紙をデジタルに置き換える「ペーパーレス」や、押印という人的作業をデジタル化した「はんこレス」をDXだととらえている節がある。これは本来のDXとはほど遠いものだ。
たしかに、紙や印刷コスト、人的コストの削減など「コストダウン」にはつながる。しかし、コストダウンはあくまで、今かかっているコストをゼロや「今より少ないコスト」にすることである。そもそも中小企業の場合、削減するためのコスト自体がそれほど大きくないこともある。すると、デジタル化に向けたシステム導入の初期費用に対し、費用対効果がつりあわなくなり、デジタル活用に足踏みしてしまう。
大事なことは、デジタル化の最大の価値は、コストダウンではなく「限界費用がゼロ」という点だ。限界費用とは、商品を1つ生産(販売)するときに発生する追加費用を意味する。デジタル化にはこの限界費用がかからない。商品が追加で売れ、顧客が増えても、限界費用ゼロ(=固定費は変わらない)ため、売上点数や顧客数をどんどん増やせばいい。中小企業におけるDXの本質とは、限界費用ゼロでビジネスを拡大させるという武器を手に入れることなのだ。
中小企業経営者がDXを進めようとして立ちはだかる壁は、巷に流れる「DX成功に必要な3つの条件」だ。
(1)「経営者がDXにコミットしなければならない」
(2)経営者がDXを含めたビジョンを描く必要がある
(3)デジタル人材を確保しなければならない
実のところ、これら3つを無理に適用する必要はない。
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