働く悩みは「経済学」で答えが見つかる

自分をすり減らさないための資本主義の授業
未読
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出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2022年08月15日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

この30年ほどの間に私たちの仕事、そして日々の生活環境は劇的に変わった。スマートフォン・ネット起点の新ビジネス、キャッシュレス決済など、これらの変化がもたらした恩恵は図り知れない。

一方、我々の精神はこの急激な変化に対応できているのだろうか。「オフタイムでもSNSで会社の人とつながっちゃって、気が休まらない」「SDGs、ESG投資、エシカル消費……いいことかもしれないけれど、“なんかうさん臭い”と思うのは自分だけ?」「先が読めない時代、子どもの将来が不安……どう考えればいいのかな」。

本書はそうした悩みを抱える20~40代のビジネスパーソンが集い、仕事や社会、自分のあり方について語り合い、モヤモヤを解決していくフィクションの構成だ。“経済学の父”、アダム・スミスをはじめ、マルクス、ケインズ、シュンペーター、ハイエクといった歴史上の偉人たちと対話し、知恵を借りながら、答えやヒントに近づいていく。

時空を超えて登場する碩学らは、それぞれが生きた時代背景と共に彼らの熱い理念を解説してくれる。彼らの語る経済を軸とした歴史を知ることで、資本主義の社会形態の変遷と、そこに内在する人々の精神を追うことができるだろう。歴史上欠かせない泰斗の思い、偉業を通じ、現代を生きる活力が湧き、「働くって何ですか?」のヒントが見つかるはずだ。

著者

丸山俊一(まるやま しゅんいち)
NHKエンタープライズエグゼクティブ・プロデューサー/東京藝術大学客員教授。
1962年長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、NHK入局。「英語でしゃべらナイト」「爆笑問題のニッポンの教養」「ソクラテスの人事」「仕事ハッケン伝」「ニッポン戦後サブカルチャー史」「ニッポンのジレンマ」「人間ってナンだ?超AI入門」ほか数多くの異色教養エンターテインメント、ドキュメントを企画開発。現在も「欲望の資本主義」「世界サブカルチャー史欲望の系譜」「欲望の時代の哲学」などの「欲望」シリーズの他、「ネコメンタリー猫も、杓子も。」「地球タクシー」などプロデュースし続ける。著書『14歳からの資本主義』『14歳からの個人主義』『すべての仕事は「肯定」から始まる』(大和書房)、『結論は出さなくていい』(光文社新書)、制作班との共著に『欲望の資本主義1~6』(東洋経済新報社)、『欲望の民主主義』(光文社新書)、『マルクス・ガブリエル欲望の時代を哲学する/自由と闘争のパラドックスを越えて/危機の時代を語る/新時代に生きる「道徳哲学」』『AI以後~変貌するテクノロジーの危機と希望』(NHK出版新書)、『世界サブカルチャー史欲望の系譜アメリカ70~90s「超大国」の憂鬱』(祥伝社)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代社会には仕事に対する不満・違和感、無意味で空疎な労働が増え続けている。激しい企業間競争に伴う過度な分業が「第三次産業主体」の仕事にまで及んでいるためだ。
  • 要点
    2
    グローバル化したネット社会の現代は、虚栄心の競争が過剰に強まっている。
  • 要点
    3
    デジタル技術によって駆動するポスト産業資本主義では、創造力の追求が人々の義務だ。

要約

時空を超えた「創造性の大学」

自由に思考できる場所
MarioGuti/gettyimages

地下鉄アカサカ駅の改札を出てすぐに見える高層ビル。23階に広がる空間は、固定観念を取っ払って自由に思考できる場所、UNIVERSITY of CREATIVITY(UoC)=「創造性の大学」だ。

ここには、さまざまな属性のビジネスパーソンが集まる。靴を脱ぎ、昼間の自分も脱ぎ捨てると、漠然と心の底に眠っていた問いが浮かび上がってくる。「この生きづらさって、資本主義のせいなの?」「お金は欲しいけど、みんなは仕事に何を求めているのかな……?」

UoCは現代の人々が抱える悩み・問題を議論し合う学びの場だ。導きの礎としたのは歴史上の「巨人」たち。アダム・スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーター、ヴェブレンといったお歴々の意識を、著書など古典の言葉を下敷きに、「現代ならばこう言うかもしれない」と仮説仕立てで展開していくフィクションである。カントなども登場し、経済学をやや離れ、社会学や哲学の領域の偉人らのものの見方や考え方も取り入れていく。

「そもそも、働くって何だろう」。今宵も誰からともなく呟きが漏れた。すると突然「その質問、私がお答えしましょう!」と声が響き渡る。声の主は「資本論」の著者、カール・マルクスだった。

そう、ここは時空を超えた教室。古代ギリシャの広場「アゴラ」のような学びの場に、歴史上の巨人や現存の世界の知性など多種多様な人々が自由に出入りする場だったのだ。

長いアカサカの夜が始まる。

今働くって、何ですか? ~労働編~

個人と社会を分断する分業

マルクスが語る。「現代は自らの仕事に不満・違和感を抱き、意味を見出せない“空疎な労働”が増え続けている。それは企業間競争の激化による過度な分業が、サービス業やソフト開発といった『第三次産業主体』の仕事にまで及んでいるためではないか。

本来、労働とは人間が自ら考える構想の作業、すなわち“精神的労働”と、実際に身体を動かす実行の作業、すなわち“肉体的労働”が統一されたものだった。しかし、会社組織が強固になるにつれ、この精神的労働と肉体的労働が分離されるようになる。

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要約公開日 2022.11.20
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