1981年の春、著者は大学院での研究生活を終え、30歳で実社会に出た。職場では上司や先輩、同年代の同僚たちが皆、優れた能力を発揮して活躍している。遅いスタートを切った著者は途方に暮れつつ、愚直に仕事を研究し、成長していった。
こうして何年も過ごすうちに、不思議なことが起こり始めた。優秀な先輩や同僚たちが、なぜか成長を止めてしまうのだ。著者は後にマネジャーや経営者になってからも、優秀なのに成長が止まってしまう人材を数多く見ることになった。
そこで気がついたのは「優秀な人ほど、成長が壁に突き当たる」という逆説だ。具体的には、優秀な人ほど「学歴」「実績」「立場」という「3つの落し穴」に陥ってしまうのだ。
「学歴の落し穴」とは、「学歴的な優秀さ」と「職業的な優秀さ」の違いを理解できないこと。「実績の落し穴」は、「自分は、それなりに仕事はできる」と思うようになり、井の中の蛙になってしまうこと。そして「立場の落し穴」は、過去の役職や肩書などに縛られ、新たな立場に合わせて自分を変えられないことである。
落し穴に陥ることなく成長していくためには、成長を止めてしまう7つの壁、すなわち学歴の壁、経験の壁、感情の壁、我流の壁、人格の壁、エゴの壁、他責の壁に気づく必要がある。要約では「学歴の壁」「経験の壁」「エゴの壁」と、それらを乗り越える技法を紹介する。この技法を知っているかどうかで、プロフェッショナルとして、そして人間としての成長に、圧倒的な差がつく。
「学歴の壁」は「頭の良い」新人が突き当たりがちな壁である。
有名大学を優秀な成績で卒業し、入社してきた佐藤さん。会議の内容や上司の発言を熱心にメモするなど、一生懸命仕事に取り組んでいる。勉強熱心で情報収集にも余念がない、真面目なタイプだ。
ところが、営業の仕事についての評価は芳しくない。うまくいかなかった商談について、プライドが邪魔をするのか上司や先輩に相談しないようだ。佐藤さんのことを陰で「あれで◯◯大学を出ているんだけどね……」と揶揄する先輩もいる。
あなたの職場にも、このような新人がいるのではないだろうか。学生時代にどれほど勉強ができても、「仕事ができる」人材になれるとは限らない。「優秀」と言われた人ほど「学歴的優秀さ」から「職業的優秀さ」への切り替えができないのである。
「学歴的優秀さ」とは、論理的思考力や知識の修得力が長けていること、つまり理路整然と物事を考えられたり、記憶力が良かったりするということだ。一方、「職業的優秀さ」は、直観的判断力と智恵の修得力が長けていることであり、勘が鋭かったり、経験から大切なことを学べたりする力である。
智恵は経験や人間を通じてしか掴めない。豊かな経験を通して深い職業的な智恵を掴むことで、優れたプロフェッショナルになれるのだ。
「学歴の壁」を乗り越えて職業的な智恵を身につけるには、「棚卸しの技法」が有効である。この技法は、自分が身につけてきた職業的な智恵を振り返るものだ。ここでの智恵とは、プレゼン力、会議力、企画力、営業力、説明力、交渉力などであり、会議を主宰することが多い立場なら「会議力」を振り返って、どの程度身についているかを棚卸しする。
「棚卸し」のポイントは2つある。1つ目は、一定期間の成長を振り返ることだ。「この半年の間に、自分の会議力はどの程度向上しただろうか」というように、期間を区切って自問する。成長が止まる人は、ある程度会議を運営できるようになると、「自分はできる」と思い込み、それ以上を求めない。成長を続けるために、自分の進歩に目を向けよう。
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