「コーチング」は「coach」という言葉から来ている。coachはもともと「大切な人を目的地まで安全に送り届ける」ことを意味し、現代では「人の目標達成を支援する」という意味で使われるようになった。
では、コーチングはティーチングとどう違うのか。飢えた人に対して「すぐに魚を釣ってあげる」が「ティーチング」、「少し時間はかかるが、魚の釣り方を教えてあげる」が「コーチング」である。
これまでの新人教育では、ティーチング思考が強く、「言われた通りに仕事をしろ」というスタンスの企業も多かった。一方、令和においては、誰もが正しい答えなど持っておらず、一人ひとりが考えて動かなければならない。そんな時代だからこそ、「言われた通りに仕事をしろ」ではなく「一緒に考えよう」というコーチングの姿勢が求められているのだ。
短期的に見ると、代わりに魚を釣ってあげた方が楽だろう。だがそれでは、上司が毎回魚を釣ることになってしまう。
部下が釣り方を覚えてしまえば、上司の手は必要なくなる。それどころか、上司よりもうまく魚を釣れるようになるかもしれない。
部下にコーチングをしようとしても、部下は「なんでこんなことをやらなきゃならないんだ」「忙しいのに仕事を増やして」などと思っているかもしれない。そこでまず上司がやるべきは、コーチングを受けるための適切な状態を作ること、「コーチングレディ(コーチングの準備)」だ。
コーチングレディのゴールは、コーチングされる側が「とりあえずやってみよう」と一歩前に踏み出すことに前向きになっている状態である。そのときに重要になるのが「やらない理由」をなくすこと。「8つの問いのフォーマット」を用いて「やる理由」を徹底的に深掘りし、明確にしていく。
8つの問いとは「なぜやるのか」「何をやるのか」「いつやるのか」「どこでやるのか」「どうやってやるのか」「誰とやるのか」「誰にやるのか」「どちらをやるのか」だ。相手に問いかけ、明確な回答を引き出すことで、はじめの一歩を踏み出せる状態に近づいていく。
コーチングレディな状態を作るためのステップ1は「相手との信頼関係を構築すること」だ。上司の自己開示→部下の自己開示→環境認識の確認という3つのステップによって、相手との信頼関係を構築する。
まずは「上司の自己開示」だ。相手のことを知るために、まずは自分の自己開示から始めよう。上司の自己開示は、次の4つの流れで進めるとよい。
1つ目は、返報性の法則を利用すること。相手から聞きたい情報があるなら、まずは自分がそれを伝えよう。例えば相手の趣味が知りたいなら「趣味は何ですか?」とストレートに聞くのではなく、「自分は最近こういうアニメにハマっているんだよね。マンガとかアニメとか観ます?」と聞いてみる。
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