子どもに幸せになってほしいと親は願うが、「幸せ」の定義は漠然としている。著者の夫で幸福学の研究者の前野隆司氏は、幸せには「4つの心的因子」が影響していることを発見した。著者ら夫婦は、それら4つの因子を意識しながら子育てを行ってきた。
4つの因子とは、第1因子・「やってみよう!」因子、第2因子・「ありがとう!」因子、第3因子・「なんとかなる!」因子、第4因子・「ありのままに!」因子だ。
第1因子は自己実現と成長の因子で、夢や目標を持ってそれを実現するために学ぶことにより幸福度が高まる。
第2因子はつながりと感謝の因子で、家族や友達などへ感謝の気持ちを持つなどの、他者とのつながりが幸福につながる。
第3因子は前向きと楽観の因子で、自己受容を高め、失敗や不安を引きずらないための因子だ。
第4因子は独立と自分らしさの因子で、他人と自分を比較せずに自分らしくいることを目指す。
これらの因子がバランスよく整っていると、幸福度が高くなり、しなやかで強い心を持ち、社会に出てからも活躍することが期待される。本書ではこの4つの因子を子どもの心の中に育てることを目指すが、まずは親の心を整えることから始まる。なぜなら、親自身が幸せであれば、発する言葉や態度からパートナーや子どもたちに幸せが自然と伝染していくからである。
「母親は毎日家族のためにごはんをつくるべき」「母親は子どもにいつでも優しくすべき」――。このように、一般的に「こうあるべき」と考えられている「人の物差し」に合わせようとして、自分を責める親は多い。
しかし、人には得意不得意があり、完璧な人などいない。まずは自分を丸ごと認めてあげることが必要だ。同様に、子どもにも得意不得意はあり、成長スピードも人によって異なる。勇気を出して人の物差しは捨て、自分も子どもも丸ごと認めるようにしたい。
ともすると、人はできないところに目が行きがちだ。著者によれば、心の中の割合はポジティブを1とすると、ネガティブは3くらいになってしまう。
アメリカのノースカロライナ大学のバーバラ・フレドリクソン教授の研究によれば、ポジティブ感情とネガティブ感情の黄金比は3:1だという。このため、子育て中も意識的にポジティブ感情を3、ネガティブ感情を1くらいの割合に保つよう心がけたい。
ポジティブとネガティブは裏返しだ。ネガティブに捉えていることもポジティブに言い換えることはさほど難しくない。
著者らによるイベントなどの参加者は「自分に対してありがとうと言いたいことは?」と問われると、答えられない人が多いそうだ。著者は、毎日生きてさまざまな経験をしているだけで、「ありがとう」と言えることはたくさんあると指摘する。「人に対して配慮ができるから仕事がうまく回っている」「毎朝早起きしてお弁当をつくっているから子どもが学校に通えている」などたくさんある。
自分を俯瞰し、頑張っていることや人のためになっていることを探し、自分に「ありがとう」と言おう。それは自己肯定感を上げ、心を安定させる。そして、子どもやパートナーにも「ありがとう」を見つけて伝えることで、家族みんなの心を安定させることにつながる。
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