著者は新卒で戦略コンサルティングファームに入社して以来、30代後半までの社会人歴のほぼすべての時間を新規事業開発に投じてきた。本書では、そんな新規事業一筋の著者が、新規事業のチーム論と方法論について明かす。
最前線のビジネスの立ち上げにおいて、最も汎用性が高い価値創造のためのスキルは、「異能の掛け算」だ。新たな価値は、カリスマ的な1人の天才ではなく、チームで創る時代だ。そのチームは、価値観もプロフェッショナルなスキルも違う、Biz(ビジネス) / Tech(テクノロジー) / Creative(クリエイティブ)の“異能”の集まりであるべきだ。
成功した新規事業というと、SpotifyやAirbnbなどの誰もが知るサービスを思い浮かべがちだ。しかし、こうしたサービスを多くの人が知るようになったのは、もはやそれが「新規事業」とはいえないような拡大フェーズを経た後だ。
0から事業を育てるフェーズは、無数の選択肢の中で正解がわかりづらい、不確実性のゲームだ。不確実性を下げていくためのプロセスは、次の3つにまとめることができる。〈子供の自由さ〉で考えすぎずに動き出す「始動する」段階、〈大人の教養〉で「無知の知に至る」段階、そして〈異能の掛け算〉で「確信と確証を得る」最終段階だ。
本書は、精神論になりがちな新規事業の成功談に、サイエンスの視点を持ち込もうとする。新規事業では、エゴや狂気ともいえる情熱が、組織や事業を駆動することがある。そうした再現不能なアートの部分を主役に置きながら、本書がサイエンス可能な部分として取り上げるのが、「異能の掛け算」だ。チームと方法の両輪で成功の確度を上げれば、結果としてアートとなる領域に専念できる。そうして自分たちにしか出せない価値を最速で創り上げてもらうことが、本書の目標だ。
本書で扱うのは、0→1(ゼロイチ)と1→10(イチジュウ)の事業フェーズにある新規事業だ。1とは「顧客課題への最小価値を検証できた状態」、10とは「事業が成立し、拡大の見込みが立った状態」を指す。10のゴールとは、事業成立の肝となる「主要成功要因」が特定され、その実現見込みが立っていることだ。10はこれから拡大するフェーズであり、チームの意思決定は「より確実性を上げて成長できるか」が指針となる。
0→10の世界はこれとは根本的に異なる。新規事業の立ち上げは全てが手探りで、確かなことなど何もない。チームの意思決定の指針は、「どうやって不確実性を減らしていくか」になる。新しい価値を創る中で暗中模索するのが、新規事業開発の基本動作だ。
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