著者の働く会社「キャスター」は、2014年の創業以来、メンバー全員がフルリモートワークで、ほぼ文章だけで仕事をしている変わった会社だ。社員同士がほとんど顔を合わせたことがないのに、どんどん業績を伸ばしている。
コロナ禍でリモートワークが増えてから、「会わずに、文章で」仕事を進める方法について、たくさんの取材や相談を受けた。会って話した方が早いと考える人が多かったのだ。キャスターは、仕方なく「書く、読む」中心のコミュニケーションをしているわけではない。「書く、読む」中心の方がより早く、より高い成果が上がるからだ。うまく書くことができれば、全員が何度も参照し、共有できるテキストが蓄積される。保存もできるし検索もできるので、長期的には圧倒的な時短になる。書き方のコツさえつかめば、じつは会うよりも早く楽に仕事が進むことに気づくはずだ。
良い文章において最も重要なのは「文章力」ではない。「何を書けば伝わるか」を知っていることだ。本書は、「決まっている項目を埋めていくだけ」で相手に誤解なく伝わる文章を書くための本だ。全員がフルリモートワークで業績を上げている会社で働きながら、著者が7年以上かけて作った本書のフォーマットを使えば、誰でも伝わる文章を楽に書くことができる。
本書を読んでいる人の中には、「書く、読む」はうまくできるようになりたいけど、「話す、聞く」の方が意図は早く伝わるのではないかと思っている人もいることだろう。以前は「話す、聞く」に比重を置いて仕事をしていた著者も、その気持ちはよくわかるという。
リクルートで部下を持ち、マネジメント業務をすることになったとき、著者はよく、思うように数字を出せない若手からの相談を受けていた。部下や後輩が出先から戻った後、夕方は対面のミーティングでいっぱいだった。だが、ある日、自分が人や時間を変えて、同じ話を何度もしていることに気づいた。そうであれば、アドバイスや対処法、トラブル対策を書いてまとめておいた方が、部下もアポイントメントを取らなくて良くなり、自分も話す時間が減るのではないか。
こうした事態はミーティングでもよく起こる。プロジェクトの進行中、新しく関わるメンバーが加わるたびに、引き継ぎミーティングが発生しがちだ。すると、その場にいる人のほとんどが既知の内容を話題にすることになる。これでは「話した方が早い」とは言えない。
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