イノベーションは、既にある製品やサービスの「顧客が気づいていない問題」や「顧客が諦めている問題」を見つけるところから始まる。
ネスレの例を紹介しよう。ネスレでは毎年、社内でアイデアコンテストを開催している。ある年に大賞をとったのは、キットカットをオーブントースターで焼くだけの「焼きキットカット」だ。シンプルなアイデアに拍子抜けする人もいるかもしれない。
焼きキットカットが大賞をとったのは、「夏場に消費者がチョコレートを食べづらくなる」という問題を解決するアイデアだったからだ。キットカットを焼くと、サクサクした食感になり、夏でも食べやすくなる。焼きキットカットは商品化され、大ヒットとなった。
このように、イノベーションは大掛かりな設備や資金がなくても生み出せる。顧客が諦めている問題を見つけられれば、ビジネスの9割は成功したも同然だ。
イノベーションのカギは「問題解決」ではなく「問題発見」だ。問題を発見できた商品やサービスは、人々のライフスタイルを変えるほどのインパクトがある。アマゾンやウーバー、アップル、メルカリ、ラインがその代表例だ。
問題発見力に優れたビジネスパーソンは、どこの企業でも重宝されるだろう。ビジネスパーソンとして生き残っていきたいなら、問題発見力は大きな武器となる。
本書では、問題発見が上手な人を「問題発見のソムリエ」と呼ぶ。問題発見のソムリエは、世の中をよりよくするための問題を一つ一つ吟味し、優先順位を考える人だ。
貧困国の水問題を考えてみよう。ユニセフによると、世界では今も約20億人が安全に管理された水を飲めない環境にある。家から何キロも離れた水場まで歩いて行き、重いバケツを携えて何度も往復するのが日常だ。この問題は長年解決されていない。
そんななか、南アフリカの建築家、ハンス・ヘンドリクス氏は「水を運ぶ方法を変えればいいんじゃないか?」と考えた。その発想をもとに開発されたのが「Qドラム」だ。ドーナツ型で、最大50リットルの水が入るプラスチック容器である。
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