ジェニファー・アーカー(Dr. Jennifer Aaker)
スタンフォード大学ビジネススクールのゼネラル・アトランティック・プロフェッサーで行動心理学者。目的と意義が個人の選択に及ぼす影響や、長期的な幸福をもたらすお金と時間の使い方、テクノロジーが人間の幸福にプラスの影響をもたらす可能性に関する研究の第一人者。
博士の研究は主要な学術誌に幅広く掲載されているほか、『エコノミスト』『ニューヨーク・タイムズ』『ウォールストリート・ジャーナル』『アトランティック』『サイエンス』などの主要紙誌でも紹介されており、共著に『ドラゴンフライ エフェクト――ソーシャルメディアで世界を変える』(翔泳社)などがある。
Distinguished Scientific Achievement Award (科学部門顕著業績賞)、スタンフォード最優秀教員賞、MBA年間最優秀教授賞などを受賞。
スタンフォード大学において「人間のウェルビーイングを助長するAIデザイン」「目的再考」「新たなタイプのリーダー」「仮想現実(VR) /拡張現実(AR) ――没入型世界における共感を高める」「ストーリーのパワー」「ユーモア――シリアス・ビジネス」等の授業を担当。
また企業の取締役や経営陣のアドバイザーとして、デジタル改革やグローバルブランド構築の助言を行うほか、イノベーション経済のため、確固たる目的を掲げ陽気さを活力とする新たなタイプのリーダーシップを推進している。
個人的には、1980年代初めのダンスコンテストで優勝を飾ったのがもっとも感動的な偉業である。時短料理の腕前にかけて、家族から「デリバリー・プラチナステータス」の評価を獲得している。
ナオミ・バグドナス(Naomi Bagdonas)
スタンフォード大学ビジネススクール講師、エグゼクティブ・コーチ。フォーチュン100社の大企業の経営陣、取締役会、パートナー向けのインタラクティブなセッションを考案・促進する戦略コンサルタント会社を経営。リーダーたちが個人的あるいは組織的な変化を起こすに当たって、創造性や革新性を引き出し、進歩を妨げる障壁を取り除き、企業文化やビジネスに永続的なインパクトをもたらす手助けをしている。
ユーモア、行動科学、人間の知覚に精通しているバグドナスは、エグゼクティブやセレブリティが『サタデー・ナイト・ライブ』や『トゥデイ』等の番組出演や講演活動を行うための指導も行っている。
デロイト時代には、人びとがさまざまな働き方を選びながら、より効果的に協働できるようにする「ビジネス・ケミストリー」の開発に携わった。このシステムは世界中で50万人以上に利用され、より強い絆で結ばれた優秀なチームの構築に貢献している。
〈アップライト・シチズンズ・ブリゲード・シアター〉で正式なトレーニングを受けた彼女は、劇場の舞台に立ってコメディーを実演し、人生の不条理は私たちをつなぐ共通の経験であることを伝えている。またサンフランシスコ郡刑務所では、レジリエンスを高めるための即興コメディーを教えている。
保護犬の飼育に協力しているバグドナスの家には、次々に犬たちがやってくる。犬たちは限りない愛情や笑いや癒やしを与えてくれるいっぽう、彼女の持ち物をことごとく破壊してしまう。
ユーモアとは何か
ユーモアに対する思い込み
人が笑う回数は23歳頃から急速に減り始める。その頃、多くの人は社会に出て働き始めるからだ。
では、なぜ職場ではユーモアを発揮しにくいのだろうか。その背景には4つの思い込みがあるようだ。
1つ目は「ビジネスは真面目であるべき」という思い込み。職場にユーモアの入り込む余地はないと思われているのだろう。だが調査によると、多くのリーダーはユーモアのセンスがある社員を好むし、自虐的なユーモアを持つリーダーは従業員から高く評価されることがわかっている。
2つ目は「何か言ってもうけないだろう」という思い込み。「すべってしまうかもしれない」という恐怖心があるのだろう。だが、うけることよりも、そのジョークが適切とみなされたかどうかのほうが重要だ。
3つ目は「ユーモアは面白くなければならない」という思い込み。必ずしも面白い発言である必要はない。自分にはユーモアのセンスがあると伝えることを目的としよう。
4つ目は「ユーモアは生まれつきの才能」という思い込み。ユーモアは、トレーニングと実践によって鍛えられる、後天的なスキルだ。
ユーモアの4つのタイプ
Kar-Tr/gettyimages
人の面白さは千差万別だ。著者は、ユーモアのタイプを4つに分類した。
1つ目のタイプは「スタンダップ」。天性のエンターテイナーで、人前に出ると生き生きするタイプだ。毒舌や自虐ネタに富み、笑いのためなら少々の犠牲も厭わない。
2つ目は「スイートハート」。よく練られた控えめな笑いをさりげなく散りばめる。人の感情を逆なでする危険を冒さず、笑いでまわりを元気にするのが特徴だ。
3つ目の「マグネット」は、いつも明るいムードメーカーだ。おバカなジョークを飛ばしながら自分で笑い、ほかの人のジョークにも大笑いする。即興コメディーや披露宴の乾杯の挨拶が得意だ。
4つ目のタイプは、鋭く皮肉っぽいユーモアを好む「スナイパー」。一発ジョークをぴしゃりと決めるのが好きだ。語り口は小声でそっけなく、気の利いたジョークをじっくりと練る。
この4タイプは固定的なものではない。もっとも重要なのは、その場の空気に合わせてふさわしい態度や話し方を採用することである。
ユーモアがもたらすもの
マルタの医師、エドワード・デボノは「ユーモアは人間の脳の活動のなかでも、とりわけ重要だ」と述べている。笑うことは、脳に大きな影響を与えるのだ。
人が笑うと、4つのホルモンが分泌され、ポジティブな変化があることが分かっている。
(1)ドーパミン(ハッピーな気分になる)
(2)オキシトシン(人への信頼が深まる)
(3)コルチゾール減少(ストレスが緩和する)
(4)エンドルフィン(高揚感が湧く)
これらが影響するのは、ユーモアで笑わせた相手だけではない。ユーモアを言った自分の脳にも変化が起きるのだ。
また、行動科学の観点から見ると、仕事上でのユーモアには4つの効果がある。
(1)パワー(知性が優れている人という印象を与える)
(2)つながり(知り合ったばかりでも打ち解けやすくなる)
(3)創造力(型破りな提案ができる)
(4)レジリエンス(挫折から立ち直りやすくなる)
ユーモアの方法論
ユーモアの2つの原則
Olezzo/gettyimages
ユーモアを使いこなしたい人のために、ユーモアの原則を2つ紹介する。
要約公開日 2023.03.15
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.