著者が経営する株式会社クロスリバーでは、クライアント企業の社員の行動履歴を収集・分析して、働き方改革を支援している。本書では、そうして見つけた「強い組織のコミュニケーション・パターン」のうち、再現性の高いテクニックが紹介されている。
クライアント43社、2.4万人の一般社員を対象としたアンケートでは、「よろしくお願いします」で1on1を始めるとメンバーのテンションが下がることが分かった。著者らはヒアリングを行い、その理由を2つ突き止めた。
1つ目は「面接・面談」になってしまうからだ。「よろしくお願いします」と言われると、人事評価面談のように感じてしまい、「まずいことを言うとマイナス評価になるから、あまり話さないでおこう」「今日は上司の話を聞くだけで守りに徹しよう」と考えてしまうのだという。2つ目の理由は、報告やプレゼンなどを依頼されている感覚をおぼえ、困惑するからだ。
では、どのようにスタートすると良いのか。43社での行動実験で効果があったのは、「感謝・ねぎらい」で始めることだ。「よろしくお願いします」ではなくて、「今日は忙しいのに時間を取ってくれてありがとう」「先週金曜日にトラブル対応してくれてありがとう」「後輩の指導をしてくれてありがとう」と言う。こうすると、事後アンケートでメンバーたちの満足度が30%以上アップすることが分かった。
22社を対象とした調査では、「コミュニケーションがうまく取れているチーム」と「そうでないチーム」の違いを明らかにしようと試みた。匿名のアンケートで、「うちのチームはコミュニケーションがうまく取れている」と回答する人が6割以上いたチームをチームA、「コミュニケーションがうまく取れていない」と回答する人が6割以上いたチームをチームBとして分析した。
両者の行動履歴を確認すると、チームAは社内会議を徹底的に減らし、浮いた時間をメンバーの研修に割り当てていた。一方、チームBは「会議のための会議のための会議のための打ち合わせ」を繰り返しており、職場の会議室は常に予約でいっぱいになっていた。
数字にすると、その違いは明らかだ。チームAはチームBより会議時間が24%少なく、一人当たりの研修時間が12%多く、チーム目標を50%達成しやすい一方で、チームBは資料作成時間が25%多く、病床・精神疾患が31%多く、離職率が18%高かった。つまり「コミュニケーションがとれているチーム」は、社内会議と資料作成にかける時間が短く、研修の時間が長く、チーム目標を達成しやすく、健康に長く働けるのだ。
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