大人になって資格取得や昇格試験のために勉強すると、物覚えの悪さに愕然とするかもしれない。だが、それは年齢のせいではない。高校生くらいまでと大人になってからとでは、脳の働き方がガラリと変わってしまっているのだ。大人になってから学生時代の勉強法を実践しても、期待する効果を得ることはできない。
とはいえ、悲観することはない。脳の「成人式」は30歳だ。20代までの脳は脳科学的には、器官として未発達である。大人になってからのほうが脳は本来の力を発揮できるようになる。記憶力、判断力、決断力なども大人のほうが上だ。脳は生涯にわたって成長し続ける。脳の最盛期は40代後半から50代であり、この時期は学びに最適な時期なのだ。
脳には1000億個以上の神経細胞があるが、役割ごとに分かれている。それを「脳番地」と著者は呼ぶ。特に重要な脳番地は、思考系・理解系・記憶系・感情系・伝達系・運動系・視覚系・聴覚系の8つに分類できる。
脳を会社にたとえるなら、意思決定の要である社長が思考系であり、その右腕である常務役が理解系だ。この2つの脳番地の連携が、大人の勉強には欠かせない。
大人になると記憶力が落ちるように感じるのは、大人の記憶系脳番地が、単独ではなかなか働かないからだ。記憶力アップには、感情系と伝達系の働きが欠かせない。感情をふだんから穏やかに保ち、アウトプットを増やすことが有効だ。
さらに脳の成長のために欠かせないのが、新しい情報である。頭がボーッとするときは運動系脳番地を活発にするために体を動かすとよい。そうすれば、視覚系と聴覚系の脳番地も働きはじめるからだ。
記憶の調整役として重要な働きを果たしているのは海馬だ。「これが好き」「この作業は楽しい」といったポジティブな感情を抱くと、海馬は入ってきた情報を重要だと判断し、長期記憶へのルートを開放する。
ポイントは、前向きな感情になることだ。勉強そのものを好きになる必要はない。たとえば、大好きなカフェラテを飲みながらハッピーな気持ちで勉強に取り組んだり、試験に合格したときの「ご褒美」を考えながらテキストを開いたりするなどして、ワクワク感を高めるのも手だ。
また、脳には「学んだことの最初と最後が残りやすい」という性質がある。復習する際は、学んだことの真ん中からスタートすると、知識をまんべんなく身につけやすくなる。さらに、勉強したその日のうちに復習すると記憶の定着率がアップする。
もし私たちが目に映るものや聞こえてくる音をすべて受け入れていたら、あっという間に脳は満杯になってしまう。そのため、これは必要だろうと思う情報しか受け入れない。
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