精神科医の立場から、運の正体について考えてみよう。運がいい人というのは、何をしてもうまくいくように感じられるかもしれない。しかし、「特定の人だけがいい思いをする」というのはあり得ない。実は、運がいい人とは、正しい考え方をして正しい行動をしている人なのだ。
うまくいかないことが続くと、運が悪いと考えることもあるだろう。運のせいにするのは、ストレスから身を守るための「防御規制」と呼ばれる心のはたらきだ。しかし、運のせいだけにしていては、自分の可能性をつぶしてしまう。多くの出来事は、自分の考え方や行動で良い方向に持っていけるのだ。
運命の定義はさまざまだ。人生の方向性は節目節目のイベントでも決まるが、日ごろの生活態度や考え方、行動の積み重ねが大きく作用するのではないだろうか。ここでは、精神科医と物書きという二足の草鞋を履く著者を例にみていく。
著者は幼少期から本が好きで物書きになる夢を持っていたが、実家が経営する内科クリニックを継ぐために医学部へ進学した。しかし途中で内科医に向いていないと感じ、一番文系に近そうな精神科医を選択した。その後、家業を継ぐために一旦内科医に戻ったが、パートナーの「Tomyって文章書くの好きだったよね?」という言葉をきっかけに、子どもの頃からの夢を思い出した。そして、ゲイで精神科医という特徴を生かしたブログを立ち上げ、書籍化も実現。クリニックは内科のドクターに託し、今は再び精神科医として勤務している。
こうして、著者は精神科医と物書きという2つの夢を実現した。運の要素もあるかもしれないが、「いつかはこれをやりたい」という気持ちが根底にあったからだ。運命は自分で作ることができるのである。
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