「人たらし」というと、欺きや欺瞞、偽善といったネガティブな意味がつきまとう。だが、本書では「人たらし」を肯定的な意味として使いたい。本書の基本スタンスは、“人をたらしこむのは絶対にいいことだ”ということである。なぜなら、人たらしな行為をするということは、相手が喜んでくれることをわざわざやってあげるからだ。人から好かれ、人間関係を円滑にするために、「人たらし」になるのはあたりまえのことである。
相手に喜ばれることを考えるには、洞察力が不可欠である。こうした洞察力は、知性にほかならない。心理学では、人に好かれるための知性のことを“社会的知性”と呼んでいる。人たらしになるということは、社会的知性を高めることだと言い換えてもいい。
多くの人には、「人たらしはよくないことだ」という信念がこびりついている。だから、著者が「戦略的にウソをつくのが、賢い人間なのです」とアドバイスをすると、生理的に抵抗を起こす人が多い。
だが、「ウソはよくない」といった信念を抱いたままでは、本書の「人たらし」の技術を身につけられない。まずは「人たらし=悪」ではなく、「人たらし=善」という図式で考えてみてほしい。
法律に触れるような反社会的なことを勧めようというのではない。本書はただ、自分の本音をちょっとだけ隠しなさい、お世辞をどんどん言いなさいといった、社会的知性を高めるための技術を紹介しているだけなのだ。これは社会人として必須のスキルであり、悪いことなど何もない。人から好かれるための心理学の法則を、本書を通じて身につけよう。
著者は“性悪説”の支持者である。「性善説」を信じたほうが人間関係がうまくいきそうだと思うかもしれないが、実際は真逆である。
3,400冊以上の要約が楽しめる