愛の本

他者との〈つながり〉を持て余すあなたへ
未読
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他者との〈つながり〉を持て余すあなたへ
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愛の本
出版社
出版日
2018年12月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「私にとっての幸せ」とは何だろうか。現在は、選択肢が広がり、多様な価値観が認められる時代だ。「私にとっての幸せ」を言語化し、具現化するうえで、迷いや悩みを持つ人は多いのかもしれない。ただ、幸せを感じた経験や、人や社会とのつながりに思いを馳せることで、自分にとっての幸せの輪郭が浮かび上がってくるのではないか――。そんな希望とともに幸せについて考えるヒントを与えてくれるのが本書だ。

本書は、2004年に社会学者の著者によって書かれ、入手困難となっていた『愛の本』を文庫化したものである。同著者による人間関係の名著『友だち幻想』へと向かう思索の書ともいわれている。テーマは、他者とのつながりの中で幸福をどうデザインするか。他者との距離をどうとって、つながりをどう育んでいけばよいのか。社会学者ゲオルク・ジンメルの思想をベースに、日々の些細な出来事や言葉のやりとりを例にして綴られている。

タイトルは『愛の本』であるが、「愛とは何か」が直接語られているわけではない。幸福のデザインに関する問いに向き合いながら読み進めるうちに、自然と、自分がどれだけ愛に囲まれているかに気づかされる。そんな一冊のように要約者は感じた。

ページをめくると、イラストレーターによる軽やかな絵が目に留まり、著者のやさしく語りかけるような語調と相まって、安心感に包まれる。人とのつながりに疲れた方、自分らしさを見つめ直したい方におすすめしたい。

ライター画像
松尾美里

著者

菅野仁(かんの ひとし)
1960年生まれ。東北大学大学院文学研究科社会学専攻博士課程単位取得。東北大学文学部助手などを経て、宮城教育大学教育学部教授・同大学副学長(学務担当)を兼任。
専攻は社会学(社会学思想史・コミュニケーション論・地域社会論)。著書に『友だち幻想』『教育幻想』(ちくまプリマー新書)、『ジンメル・つながりの哲学』(NHKブックス)、『18分集中法-時間の質を高める』(ちくま新書)、共著に『社会学にできること』(ちくまプリマー新書)、『この国で大人になること』(紀伊國屋書店)などがある。2016年、没。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分にとっての幸せについて考えるためには、他者とのつながりや社会について思いを巡らすことが大切になる。
  • 要点
    2
    幸福の具体的な形は人によって異なるものの、一定の条件がある。それは、「自己充実をもたらす活動」と「他者との交流」の2つを同時並行的に実現することだ。
  • 要点
    3
    幸福のデザインにおいて大切なのは、純度100%の関係を求めず、自己表現への恐れを手放し、ピュアネスを追求することである。

要約

幸福のかたちって?

「つながり」への揺れる想い

現代は、自分らしさや個性を追求することを求められている時代だ。だが、「自分」にこだわって自我のありさまを内へ内へと追い求めていると、かえって息苦しくなってしまう。そんな人こそ、他の人間や身の周りの世界と自分がどうつながっていけるのかを丁寧にとらえ直す「見取り図」を必要としている。

「私」のことを深く考えるためには、他者とのつながりや社会について思いを巡らすことが大切になる。「他者」「社会」といった、自分の「外側」にあるように思える事柄が、実は私たちの心の内側と深くつながりを持っている。周りの世界と自分自身との「つながり」の可能性について考えてみよう。きっと、自分にとっての幸せとは何かを見つめ直すよいきっかけになると思う。

幸福のかたちって?
Natalie_/gettyimages

周りの人たちとのつながりを考えるとき、「他者」という言葉がキーワードになる。見知らぬ人(他人)ばかりではなく、友達や家族などの身近な人も「他者」だととらえてみたい。

哲学者の竹田青嗣によると、他者は、自分にとっての「脅威の源泉」と「エロスの源泉」という2つの側面をもつ。「脅威の源泉」とは、自分が世界の中心であるという自己中心的物語を相対化し、時には否定するような存在を意味する。

他者が「脅威の源泉」なだけであるなら、傷ついたら引きこもってしまえば楽だが、引きこもってしまうことが苦しいのはなぜか。それは他者が「エロスの源泉」でもあるからだ。

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要約公開日 2023.04.06
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