現代は、自分らしさや個性を追求することを求められている時代だ。だが、「自分」にこだわって自我のありさまを内へ内へと追い求めていると、かえって息苦しくなってしまう。そんな人こそ、他の人間や身の周りの世界と自分がどうつながっていけるのかを丁寧にとらえ直す「見取り図」を必要としている。
「私」のことを深く考えるためには、他者とのつながりや社会について思いを巡らすことが大切になる。「他者」「社会」といった、自分の「外側」にあるように思える事柄が、実は私たちの心の内側と深くつながりを持っている。周りの世界と自分自身との「つながり」の可能性について考えてみよう。きっと、自分にとっての幸せとは何かを見つめ直すよいきっかけになると思う。
周りの人たちとのつながりを考えるとき、「他者」という言葉がキーワードになる。見知らぬ人(他人)ばかりではなく、友達や家族などの身近な人も「他者」だととらえてみたい。
哲学者の竹田青嗣によると、他者は、自分にとっての「脅威の源泉」と「エロスの源泉」という2つの側面をもつ。「脅威の源泉」とは、自分が世界の中心であるという自己中心的物語を相対化し、時には否定するような存在を意味する。
他者が「脅威の源泉」なだけであるなら、傷ついたら引きこもってしまえば楽だが、引きこもってしまうことが苦しいのはなぜか。それは他者が「エロスの源泉」でもあるからだ。
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