これからの時代、ひとりひとりが自分をたいせつに扱い、自分を本当の意味で愛していることが、生きる上で重要になる。ここでの「自分をたいせつにする」とは、自分勝手、利己的とは異なる。
著者は、「ひとりひとりが自分をたいせつにして、ほんらいの自分に戻ることが、自然やまわりの人をたいせつにすることにつながる」という。自分を本当の意味で愛せた時、自分の周囲の人や地球環境をも愛すことができ、結果として世界をより平和に、幸福なものにしていくことができる。現代社会は、地球環境が危機的状況にあり、社会がさまざまな問題を抱えている。世界が大転換期にある今こそ、自分をたいせつにすることで、自分の土台をつくるチャンスなのである。
自分のことを愛しているかどうか、ほんとうに突き詰めて考えてみたことがある人は、ほとんどいないであろう。そもそも自分というのは、よくわからない存在である。人生とは、「気づいたらマラソン大会に出ることになっていて気づいたらもう走り始めていたランナーみたいなもの」だ。
子ども時代を経てできあがる、「自分ってこんな感じ」というイメージを、「自分風」と呼ぼう。これはまだ揺らいでいて、家族を中心とした他人の価値観や地域の信念といった衣服をまとっているようなものだ。この状態においては、自分をたいせつにできているかは本当の意味ではわからないだろう。何が好きか、何がしたいかも他人の影響を受けており、本来の自分の考えではない可能性がある。
子ども時代にいったんできあがる「自分風」に一番影響を与える親の価値観は、あなたよりも前の時代の価値観だ。一生懸命がんばって努力し、成功して、安定した仕事と、豊かな経済力を持つことを考えていた。その中で、やりたくないこともがまんしてやっていると、自分をたいせつにすることは後まわしになる。
同時に、恐れ、不安、心配といった感情や意識、および「〜するべき」といった善悪についての思い込みを、衣服のようにどんどん着込んでいく。そこにはもちろん、一般的な情や優しさといったものも含まれる。子ども時代に受けた傷を隠すために、仮面や色眼鏡もかけていく。
こうしてできあがった「自分風」は、本来の自分の姿がわからなくなった「着ぐるみ状態」だ。親も含め世の中には、この「着ぐるみ状態」の人が溢れている。そうした人々は「外側」の情報に振り回され、利己的で自己中心的に、お金儲けや日々生きることに必死になってきた。
人生の中で変化や問題が起きると、着ぐるみを脱ぐ、あるいは剥がされるタイミングがやってくる。何かの道を極めたり、旅をしたりする中で脱いでいくこともある。マラソンにたとえれば、最初の頃の「なんとなくこんな感じ」という走りが通用しなくなるのだ。何度もトライしながら、自分らしい走りをするようになり、いつしか走ること自体が喜びに変わる。
こうして「自分風」から本来の自分に移行すると、生まれた時の素っ裸の自分よりも輝きが増す。「自分自身でいるだけで心地よく、気分がいい状態」で、何があっても大丈夫と思える。自然と自分をたいせつにできている状態になれるのだ。
著者が自分の体験や本から学んだ「自然の法則」は、自分をたいせつにするためのヒントになる。いくつか紹介しよう。
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