ダイアローグ

価値を生み出す組織に変わる対話の技術
未読
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価値を生み出す組織に変わる対話の技術
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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2023年02月17日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

自分の発言に対し、同僚から反対意見が出された。多様な意見を交わし合うことの重要性は重々承知しているつもりだが、ついムッとし、「全然ダメ」「あり得ない」「実現性がない」と心の中で即座に否定してしまった――。こんな経験のある方に、本書をぜひおすすめしたい。

著者は、ベストセラー『リフレクション』の著者でもある熊平美香氏だ。本書では、リフレクションを取り入れた「ダイアローグ(=対話)」を行い、組織の成果を上げる方法を教えてくれる。

なぜ対話によって組織の成果を上げることができるのか。本書によると、対話は「『ありたい未来を自分たちの手で創り出す行為』に欠かせない手段」だからだ。その理由を、熊平氏は「どれほど有能な人でも、一人で世の中を変えることは難しく、自分と異なる専門性を持つ人や、違う強みを持つ人と協働することこそが、大きな成果につながる」と語っている。変化が激しく、前例のコピーが通用しなくなりつつある現代においては、多様な人と対話をし、それぞれの意見や考えを取り入れていくことこそ、成功への近道なのだ。

本書を通読すると、冒頭で挙げたような「賛成できない意見にムッとする」ことは、ほとんどなくなるだろう。むしろ自分と違う意見にこそワクワクし、新たな可能性を感じられるようになるはずだ。強いチーム、多様性を活かせるチーム、新しい価値をどんどん創造できるチーム、厄介な問題をスムーズに活用できるチーム……そんなチームを理想とするならば、本書で対話の技術を学ばない手はない。

著者

熊平美香(くまひら みか)
昭和女子大学キャリアカレッジ 学院長
一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事

ハーバード大学経営大学院でMBA取得後、熊平製作所の企業変革に従事。日本マクドナルド創業者に師事し新規事業開発を行った後、1997年に独立し、リーダーシップおよび組織開発に従事する。2009年より日本教育大学院大学で教員養成に取り組む傍ら、未来教育会議を立ち上げ、教育ビジョンの形成に尽力。2015年に一般社団法人21世紀学び研究所を設立し、リフレクションの普及活動を行う。昭和女子大学キャリアカレッジではダイバーシティと働き方改革の推進、一般財団法人クマヒラセキュリティ財団ではシチズンシップ教育に取り組む。Learning For All等教育NPO活動にも参画。文部科学省中央教育審議会委員、内閣官房教育再生実行会議高等教育ワーキンググループ委員、経済産業省『未来の教室』とEdTech研究会委員などを務める。2018年には経済産業省の社会人基礎力にリフレクションを提案し、採択される。2021年10月、NHK Eテレ「プロのプロセス」に出演し、リフレクションを紹介。著書に 『リフレクション』(ディスカヴァー)、『チーム・ダーウィン「学習する組織」だけが生き残る』(英治出版)、『ピースフルスクールプログラム』(東洋館出版社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    対話によって多様な人と協働し、驚きや違和感に出会うことが、新しい発見につながる。
  • 要点
    2
    「メタ認知」「評価判断の保留」「傾聴」「学習と変容」「リアルタイム・リフレクション」という5つの力を身につければ、成果を生み出す対話を効果的に実践できるようになる。
  • 要点
    3
    多様性あるチームで「行動様式の壁」を溶かすには、お互いの経験とともに「なぜ、その行動様式を大事にしているのか」を共有することが効果的だ。

要約

成果につながる「対話」のスキル

驚きと違和感は成果を上げるチャンス

大きな成果を上げるには、自分と異なる専門性や強みを持つ人と協働することが重要だ。対話は、そうした協働を通して、ありたい未来を自分たちの手で創り出す行為に欠かせない手段である。

多様な人たちと対話をすると、驚きや違和感を抱くことがある。驚きや違和感は、自分にとって未経験で、自分の常識の枠の外にある「何か」と遭遇したときに生まれる感情だ。そのため対話では、驚きや違和感との出会いを、新たな発見の機会であると捉える。

自分のメンタルモデルに目を向ける
recep-bg/gettyimages

自分の常識や固定観念に気づくためには、メンタルモデルに対する理解が欠かせない。

メンタルモデルとは、マサチューセッツ工科大学のピーター・センゲ氏が提唱する「学習する組織論」で紹介されている、私たちが物事を捉える際の前提のことだ。メンタルモデルは過去の経験を通して形成され、その人のものの見方を決める。

例えば「犬に遭遇する」という経験をしたとき、その事実に対する判断は一人ひとりのメンタルモデルによって変わる。

小さい頃から犬を飼っていて、犬をかわいがった経験を持つ人の多くは、「犬は自分を癒やしてくれる存在である」というメンタルモデルを形成する。このようなメンタルモデルを持つ人が犬に出会うと、犬に近づき、かわいがりたくなる。

逆に、小さい頃に犬に吠えられたり、追いかけられたりした経験を持つ人の多くは「犬は危険な存在である」というメンタルモデルを形成する。このようなメンタルモデルを持つ人が犬から遠ざかろうとするのは、ごく自然な行動だ。

メンタルモデルと驚き・違和感の関係

メンタルモデルと驚きや違和感には、どのような関係があるのか。

私たちは、自分のメンタルモデルに当てはまらない何かに遭遇したとき、驚きや違和感を覚える。自分と正反対の意見に遭遇したとき、不快に感じてしまったり、その存在自体を否定したくなったりするのも、メンタルモデルの影響だ。

しかし、価値創造のための対話では、驚きや違和感は不都合なものではなく、歓迎すべきものである。新鮮な学びを獲得したり、新たなメンタルモデルを形成したりするきっかけになるからだ。

これから紹介する対話の5つの基礎力を身につければ、対立する意見に遭遇しても、自分の感情をコントロールしつつ、成果を生み出すための対話を効果的に実践できるようになる。

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要約公開日 2023.04.13
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