ドイツの思想家であるビョンチョル・ハンは、新自由主義的資本主義が進行する社会を「疲労社会(燃え尽き症社会)」と表現している。ハンが前提にする新自由主義は、アメリカの「シカゴ学派」と呼ばれる経済学者たちによって広く展開されているテーマである。具体的には、「国家による介入をできるだけ小さくし、福祉や公共サービスを民営化していくことを良しとし、大幅な規制緩和を掲げながら、多くの事柄を市場の競争原理に委ねること」と解釈されている。
新自由主義的な政策として知られるのは、イギリスのサッチャー政権による「サッチャリズム」やアメリカ・レーガン政権による「レーガノミクス」などだ。日本では、中曽根政権や小泉政権の一部政策が該当する。ハンによると、新自由主義的な要素を取り入れた国々で疲弊社会の問題が生じている。
疲労社会とは、文字通り「社会で生活する人々の心身が疲弊していること」を指す。ハンは新自由主義的社会の生活における特徴として「ハッスルカルチャー」を挙げる。ハッスルは「乱暴に押し込む」「無理にさせる」という意味を持つ。自分の時間やエネルギーを無理に押し込める形で過労状態にある人が増えているというのだ。
だが、著者はこの状態が社会に浸透することが、成長を促すのではなく、逆に成長を阻害していると述べる。私たちが真に成長するためには、適切な課題と支援のもとで、じっくりと実践に取り組む必要があるからだ。
問題は、私たちがハッスル状態であることに無自覚であることだ。
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