世間では誤解されがちだが、「話し上手」とは止めどなく話し続けられる人のことではない。乗り気ではない相手に話し続ける人は「話し上手」ではなく「話し自慢」だ。話し自慢は、口下手な人の何十倍も聞き手を疲れさせる。
本物の話し上手は、周囲を楽しく愉快な気持ちにさせる人だ。話し自慢が自己顕示欲を満たすために話すのに対して、話し上手はみんなの笑顔を見るために話す。また、話を独占せず、その場にいる人すべてに話を振ったり、難しい話題やマニアックな話題でもみんなが興味を持てるように工夫したりするのも、話し上手の特徴だ。
話をする時は、相手をよく見て話す。これは話し方のセオリーであり、実践している人も多いだろう。
話し自慢も、相手をじっと見て話をしている。ただ不思議なことに、その人が笑っていないことや目が死んでいること、うなずきが小さいこと、質問が少ないことなどに気づかない。その場を独占していることに酔いしれているからかもしれない。
一方、話し上手は、相手の表情やしぐさをよく観察している。「この話題で相手は楽しんでくれているだろうか」「内容がよく伝わっているだろうか」「相手にも話したいことがあるのではないだろうか」と考えつつ話し、時には「こんな話だけど続けてもいい?」と問いかけもする。相手が楽しんでいないように感じたら、話の途中で切り上げて、「あなたは最近どうなの?」と相手に譲る潔さもある。
会話は全員で楽しむもの。この姿勢こそ、話し上手が誰からも愛される理由の一つだ。
話し自慢の人と一緒にいると、なぜ疲れてしまうのか。それは、私たちが人の話を聞く時、頭の中で「映像化」していることと関係がある。
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