疲れない脳をつくるためにすぐにできること、それは、背筋を伸ばして深い呼吸をすることだ。
呼吸は、身体や感情のバロメーターである。「最近ストレスがたまっている」「体がすぐに疲れてしまう」という人は、背筋を伸ばしてゆっくりと深い呼吸をしてみよう。鼻から5秒くらいかけて吸い、口か鼻から10~15秒かけて吐くのである。
ポイントは、時間をかけて吐くことだ。長く息を吐くと副交感神経が優位になり、リラックスした状態を生み出しやすい。
緊張したり興奮したりする時間が長いほど、脳は疲れてしまう。1日1回でも姿勢と呼吸を整える時間をつくることで、脳の基礎力は改善されていくだろう。
姿勢と呼吸を整えることは、「瞑想」の基本動作である。瞑想は「宗教的」だと敬遠する人もいるかもしれないが、現在は最先端科学の研究テーマとして、その効果やメカニズムが次々と明らかにされている。
著者は瞑想を「脳の基礎力を鍛えるためのベースメソッド」だと説明する。瞑想には集中力、記憶力、モチベーション、コミュニケーション能力など、仕事のパフォーマンス全般を上げる働きがあるのだ。
ここでは2つの実践方法を紹介する。いずれも背筋を伸ばして、深い呼吸とともに行う。目は開けていても閉じていても構わない。
まず、ひとつの対象に注意を向ける「集中瞑想」だ。注意を向ける先はなんでもいいが、初心者は自分の呼吸に集中するといい。もし呼吸以外のことに意識が向いた場合は、再び呼吸に意識を戻す。集中瞑想をすると、脳の実行機能を担う「前頭前皮質」が活性化され、集中力や記憶力、意思決定力が高められる。
もうひとつは「観察瞑想」だ。瞑想中に生じる思考や感覚をそのまま観察する手法で、想像力や発想力などの強化が期待できる。たとえば、「いま、私は座っている」「外から大きな音が聞こえる」と頭に浮かんだ内容を「観察」する。ただ観察するのが難しいなら、脳内実況をしてもいい。
観察瞑想を行っているときの脳は、何も考えていない「アイドリング状態」にある。過去のさまざまな感情や記憶が結びつき、新しいアイデアが浮かびやすくなるだろう。また、自我や感情の暴走を抑制し、社会性や思いやりを司る脳の部位を活性化するため、対人関係やコミュニケーション能力の強化にもつながる。
脳科学や神経科学が瞑想の効果を実証したことで、瞑想は社会全体に広まっていった。この「瞑想の科学」をいちはやくとりいれたのがグーグルである。
グーグルは2007年より、瞑想を活用した能力開発プログラム「SIY(サーチ・インサイド・ユアセルフ)」を実施している。「自己探求」を意味するこのプログラムでは、思いやりや感情コントロールといった「EQ(心の知能指数)」を高めるためのトレーニングを行う。
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