美食の教養

世界一の美食家が知っていること
未読
美食の教養
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美食の教養
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2024年06月25日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

食べることなくして人は生きていけない。とはいえ、食に対する愛と情熱の度合いは、人によって大きなバラつきがあるように思う。愛と情熱の大きさで言えば、本書の著者、浜田岳文氏の右に出る人はいないだろう。

南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破――浜田氏の経歴の一節だ。浜田氏はこの豊富な経験から得た知見を1冊の本にぎゅっと詰め込んで、私たちにシェアしてくれている。

本書は“なぜ、「美食」か”という問いからはじまる。そしてその問いに答える中で、著者は「誰かが作る食にしか興味がありません」「それは僕自身、クリエイティビティが欠如しているからだと自己分析しています」と書いている。著者は、食べることを「優れたクリエイターが作るものを享受する」行為だと捉えているのだ。

その前提のもと、著者ならではの美食哲学や美食の評価軸から、美味しさに出会うための心得・店選び・食べ方、フランスやイタリア、スペインをはじめとする世界各国の料理の歴史と特徴、著者が尊敬するシェフたち、美食の未来予測、いい客になるためのコツ、世界の注目レストラン50まで、幅広いコンテンツが詰め込まれている。どれも世界一の美食家である著者にしか書けない、知的好奇心を刺激してくれるものばかりだ。

本書を読めば、普段何気なく向き合っている「食」の見え方や体験が大きく変わるだろう。人生をもっと楽しむために、ぜひ読んでおきたい一冊だ。

著者

浜田岳文(はまだ たけふみ)
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。
大学在学中、学生寮のまずい食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。
南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5カ月を海外、3カ月を東京、4カ月を地方で食べ歩く。
2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破。
「OAD世界のトップレストラン(OAD Top Restaurants)」のレビュアーランキングでは2018年度から6年連続第1位にランクイン。国内のみならず、世界のさまざまなジャンルのトップシェフと交流を持ち、インターネットや雑誌など国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信中。株式会社アクセス・オール・エリアの代表としては、エンターテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資も行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    食事には「①栄養摂取」「②うまい」「③美味しい」という3つの段階がある。①は生存としての行為、②は本能としての欲求、そして③は文化としての知的好奇心によるものだ。
  • 要点
    2
    本書における「美食」とは、必ずしも贅沢なものでも、美しいものでもない。文化的に食べること、すなわち「うまい」だけではない「美味しい」を探求することが、著者にとっての「美食」である。
  • 要点
    3
    フーディーである著者は、美食を評価するにあたって、その料理が「どれだけ考え抜かれているか」と「シェフが自分の考えをどこまで体現できているか」を重視する。

要約

【必読ポイント!】 著者の「美食」哲学

食事における3つの段階

食事には「①栄養摂取」「②うまい」「③美味しい」という3つの段階がある。「栄養摂取」は生存としての行為、「うまい」は本能としての欲求、そして「美味しい」は文化としての知的好奇心によるものだ。

本書は、食事を「栄養摂取」ではなく「人生を豊かにするための手段」と位置づけたうえで、「誰かの基準に振り回されずに、食事を楽しみたい」「絶えず更新される『美味しさ』の秘密を知りたい」「食の最前線で活躍する人の創意工夫に触れたい」と望む人に向けて書かれている。本書を読めば、食事を「知的体験」として楽しめるようになるだろう。

なぜ「外食」なのか
maruco/gettyimages

「フーディー」という生き方をする著者にとっては、世界中を飛び回り、現地の美味しい店で食事をするのが日常だ。南極から北朝鮮まで、世界127カ国・地域で食べ歩き、その体験をSNSや国内外のメディアで発信してきた。2017年度には「世界のベストレストラン50」にランクインしている店を制覇し、翌2018年度から6年連続で、「OAD世界のトップレストラン」のレビュアーランキングで第1位に輝いた。

食についての考え方は人それぞれであり、そこに正解・不正解はない。栄養補給ができればいい、お腹が満たされればいいという人もいれば、「何を食べるかではなく、誰と食べるかが大事」と考える人、自分で作って食べるのが好きな人、誰かに料理を振る舞うのが好きな人もいる。

著者自身は外食に特化しており、食を通して料理人というクリエイターの作品を鑑賞し享受するのがライフワークだ。ライブやフェスでアーティストのパフォーマンスを楽しむような感覚で、料理人のオリジナリティやクリエイティビティを楽しんでいる。

「美食」の再定義

本書における「美食」とは、必ずしも贅沢なものでも美しいものでもない。ニュアンスとしては「ガストロノミー(Gastronomy)」に近いだろう。

Wikipediaによると、ガストロノミーとは「食事と文化の関係を考察することをいう。料理を中心として、様々な文化的要素で構成される。すなわち、食や食文化に関する総合的学問体系」だ。要するに、文化的に食べること、すなわち「うまい」だけではない「美味しい」を探求することこそが、著者にとっての「美食」の定義である。

著者は、単にものを食べるのではなく、ものの背景にある歴史や文化を感じながらいただきたいと思っている。つまり、食べるという行為を通じて、多様な社会や文化を深く理解し、知的好奇心を満たしたいのだ。

美味しい味を楽しむだけではなく、どう美味しくしているのか、なぜその地で食べるのか、どんな歴史的背景があるのか、どんなストーリーがつむがれているのか……といったものを含めて食事を楽しむこと。著者にとって「文化的に食べる」とは、このような食事の仕方を指す。

高級店に通う理由

著者はしばしば「どうして何万円も払って、わざわざ高級レストランに行くのか?」と尋ねられることがある。

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要約公開日 2024.08.21
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