脳の仕組みから考えると「捨てたいけれど捨てられない」のは当然である。なぜなら、脳には「集める」性質があるからだ。
人間は日々、いろいろな情報を集めて、その後の行動を決めている。さらには、私たちが何かを経験するたび、それにまつわる情報が入ってくる。このように、さまざまな情報を蓄積する脳の性質を、本書では「集める脳」と呼ぶ。
脳に「集める」性質があるなら、無理して「捨てる脳」にならなくてもいいのでは――と思う人もいるかもしれない。だが実は、意識的に「集める脳」から「捨てる脳」にシフトしていかないと、脳は劣化の一途をたどってしまう。
というのも、無意識に捨てる(=忘れる)ことと、意識して捨てる(=自分の意思で取捨選択する)ことは、似ているようでまったく違う。「日々どんどん経験を積み、情報を脳に蓄積していく一方で、自分にとって意味のないもの、関係のないものについては、無意識に捨てていく」状態を放置していると、脳がマンネリ化して、うまく働かなくなってしまうのである。本書ではその前提のもと、うまく「捨てる」方法が解説される。
脳に情報を集める仕組みは三段階に分けられる。
まず、外部からの情報を、五感を通じてインプットする。
次に、ワーキングメモリが取次役として機能して、脳に入力された情報が短期記憶として保持される。ワーキングメモリは、言語処理やイメージ処理に関わる何らかの作業をするために記憶する、あくまでも一時的な記憶だ。
最後に、ワーキングメモリから長期記憶へ、記憶の定着を推進する。長期記憶とは、脳の中に定着した記憶だ。忘れたくない大切な思い出からさほど重要ではない情報まで、さまざまな記憶が混在しており、私たちはその中から必要な記憶を取り出しながら日常生活を送っている。
「捨てる」とは、裏を返せば「大事なものを残す」行為でもある。
対象となるモノとあなたの歴史、すなわち記憶によって、「捨てたい」「残しておきたい」という感情が起こる。例えば、ヨレたTシャツが手元にあったとして、それが景品としてもらったものならすぐに捨てられる。一方、親友からのハワイ土産であれば、捨てるのをためらってしまいそうだ。また、推しのライブで入手したレア物であれば、どんなにヨレていても残しておきたいと思うかもしれない。
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