「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす

コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術
未読
「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす
「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす
コーチングのプロが教える 相手を認め、行動変容をもたらす技術
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「承認 (アクノレッジ) 」が人を動かす
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2024年04月19日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

部下が思ったように動いてくれない。業績を上げてくれない。あなたが上司だとして、あなたはこうした悩みとは無縁だろうか。組織は人と人との関係の上に成り立っている。そこには上司と部下がいて、多種多様な人間関係が構築される。部下は自分と同じ一人の人間だ。思い通りにならないのはある意味当然といえる。「俺はこう考えているのだから、この通りにやれ」といっても上手くはいかないだろう。昔はそれで仕事が回ったのかもしれないが、令和の今はそうはいかない。思い通りにならないことに腹を立てて怒鳴りつけでもしたら、その部下は最悪、辞めてしまうかもしれない。

本書はコーチングについて触れたものだ。つまり、書名にもあるように「人を動かす」ための本である。著者は経験豊富なコーチングのプロだ。本書をめくってみても「部下を思い通りにする」ための技術は書かれていない。書かれているのは、部下を一人の人間と認め、そこに自発性を生み出すエネルギーを供給するための技術だ。部下が組織のために、自ら考えて行動し、そして成長していく。そのためのキーワードが本書のタイトルにもなっている「承認(アクノレッジ)」である。人は誰だって認められたいし、自分が役に立っていると実感したい。こうした欲求にはたらきかけ、相手を一人の人間として尊重し、行動を変えていく。これがアクノレッジの持つ可能性だ。

本書の理論は決して難しくない。コーチングに興味のある人や部下との関係で悩んでいる人は気軽に読んでみてはいかがだろうか。

著者

鈴木義幸(すずき よしゆき)
株式会社コーチ・エィ代表取締役社長/エグゼクティブコーチ
慶應義塾大学文学部人間関係学科社会学専攻卒業。株式会社マッキャンエリクソン博報堂(現株式会社マッキャンエリクソン)に勤務後、渡米。ミドルテネシー州立大学大学院臨床心理学専攻修士課程を修了。帰国後の1997年、コーチ・トゥエンティワンの設立に参画。2001年、株式会社コーチ・エィ設立と同時に、取締役副社長に就任。2007年1月、取締役社長就任。2018年1月より現職。
200人を超える経営者のエグゼクティブ・コーチングを実施。リーダー開発とともに、企業の組織変革を手掛ける。また、神戸大学大学院経営学研究科MBAコースをはじめ、数多くの大学において講師を務める。
『新 コーチングが人を活かす』『理想の自分をつくる セルフトークマネジメント入門』(ディスカヴァー)、『新版 コーチングの基本』(日本実業出版社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    相手の内発的なエネルギーを供給し続けるのがアクノレッジメントである。
  • 要点
    2
    ほめる、という行為には技術が必要である。ただいたずらに美辞麗句を並べるだけでは部下の心に響かない。相手のことを観察し、どういった言葉を欲しているのかを見極める必要がある。
  • 要点
    3
    人のコミュニケーションタイプは「コントローラー」「プロモーター」「サポーター」「アナライザー」の4つに分けられる(「タイプ分け」™)。それぞれに適したアクノレッジを行おう。

要約

アクノレッジメントとは何か

エネルギーを供給すること

コーチングは、問いを投げかけ、相手が自発的に前進できるようサポートする。サポートされた側は行動に対して「意味づけ」がなされ、意味づけがなされた行動は他人による指示よりも現実化する可能性が高いと言われている。

目的地が定まり、そこに自ら歩んでいく。しかし、その目的地へと到達するには「エネルギー」の継続的な供給が必要となる。このエネルギー供給のことを、コーチングの世界では「アクノレッジメント(acknowledgement)と言うのである。アクノレッジメントの回数やバリエーションが多ければ多いほど、相手はより遠くの目的地まで動いていける。

アクノレッジメント、承認とは、声を掛けるといった何気ないやり取りも含め、「『私はあなたの存在をそこに認めている』ということを伝えるすべての行為、言葉」を指す。太古より協力関係を築くことで生き延びてきた人間は、アクノレッジメントによって「生き残れるか」の不安を払拭してきた。だからこそ、それを与えてくれる人に強い信頼感を抱くのだ。

「ほめ」は技術
PeopleImages/gettyimages

トミー・ラソーダは、野茂英雄選手が渡米した時にロサンジェルス・ドジャースの監督をしていた。彼のマネージャーとしての手腕は別格だった。その彼はほめるという行為を次のように捉えている。

ほめることは、「すばらしい!」などと美辞麗句を投げかけることではない。相手が心の奥で欲している言葉を伝えることで、「ほめる」という行為は完結する。

これは、選手の観察と試行錯誤から導き出されたことだ。ヒットを打った選手にさまざまな言葉を投げかけ、少しだけ笑みを漏らす反応を得られた言い回しやフレーズを、「これだ」と得心する。

このように、ほめるという行為は技術なのだ。相手をよく観察し、どういった評価が欲しいのかを熟慮することで初めて、「ほめ言葉」を発するべきである。部下が喉から手が出るほど聞いてみたい言葉を想像し、考えに考え抜いて、真剣に心から伝える。部下の動きは別人のように変わるはずだ。それができるように、まずは練習あるのみである。

【必読ポイント!】 人を大事にするアクノレッジメント

任せることが持つ力

企業のマネジャーに対しても、「任せる」ことは絶大な力を持つスーパーアクノレッジメントである。ただし、「任せる」と「押し付ける」は違うということに注意したい。「任せる」とは、最終的な責任をこちらで受け持ちつつ、「相手の裁量で進められる部分をきちんと与えて仕事を振る」ことだ。

任された人は自分が必要とされていることを感じられるし、集団の一員であるという認識のなかで不安を減らすことができる。より創造的になるし、フットワークも軽くなる。

しかし、任せることを実践するのは難しい。ついつい口を出してしまう行動は、欲しがっていたおもちゃが手に入った瞬間に取り上げるようなものだ。部下のモチベーションも、上司に対する信頼も失せてしまうだろう。

また、任せることは丸投げとも違う。任せるのがうまい上司は部下に何を任せられるかを一生懸命探している。失敗しても自分が責任をとれる、部下の成長にとって大いに役立つものを見定めたうえで仕事を与える。そして、任せられるものを見つけたら、真剣な眼差しで「頼んだぞ」と言い切るのだ。

怒ると叱るの違い
kazuma seki/gettyimages

管理職や経営者は「部下を叱ると辞めてしまう」という悩みを抱えている。ここで頭の隅に入れておきたいのは「叱る」と「怒る」は違うということである。

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要約公開日 2024.08.22
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