ただの小さな村であったマコンドに文明の光をもたらしたのは、錬金術の心得があるジプシーたち、とりわけそのうちの一人であるメルキアデスだった。メルキアデスの話とその技術は、とてつもない空想力を持つ男、ホセ・アルカディオ・ブエンディアと、その子供たちを夢中にさせた。
若き指導者であった頃のホセ・アルカディオ・ブエンディアは指導者として精力的に働き、率先して社会に奉仕した。その当初のマコンドは、同規模のほかの村より勤勉で幸せな村になった。しかし、メルキアデスの技術と知識、不思議に魅了された彼は身だしなみさえ気にしない男に変わってしまった。
ある時、村にやってきたジプシーが訃報を持ってきた。メルキアデスはシンガポールで死んだという。悲しみに呆然となるホセ・アルカディオ・ブエンディアだったが、メンフィスの学者が発明した氷に初めて触れた途端、その感動でメルキアデスの死など忘れてしまった。
それはメルキアデスがマコンドに行き着く前のことだ。
新大陸生まれの男の子孫であるホセ・アルカディオ・ブエンディアは、いとこのウルスラとともに山奥の集落で育ち、そのまま婚姻関係を結ぼうとしたが、親戚たちはこぞって反対した。両家は何百年も前から血をまじえており、その末裔による近親相姦は恥ずべき結末をもたらすとされていた。実際、豚のしっぽを持つ子供を産んだという前例があった。それでも、彼はそうした心配をはねのけウルスラと結婚した。
この決断に強く抵抗したのがウルスラの母親である。生まれてくる子供にさまざまな不幸が起こると予言し、二人の交わりをウルスラに拒否させた。これは夫の不能の噂として広まり、あの運命の日曜日がやってくる。
闘鶏の賭けごとをしている時に、悲劇は起きた。賭けに負けたプルデンシオ・アギラルという男が、夫婦の関係についてホセ・アルカディオ・ブエンディアを侮辱したのである。これに興奮したホセ・アルカディオ・ブエンディアは投げ槍で彼を殺害してしまった。その夜、プルデンシオ・アギラルの通夜が行われている間じゅう、ウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディアはからみ合っていた。
この一件から、ホセ・アルカディオ・ブエンディアに変化が訪れた。プルデンシオ・アギラルの亡霊が見えるようになったのである。いつまで経っても消えない亡霊に、ホセ・アルカディオ・ブエンディアはついに根負けして集落から出ていく決心をした。
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