百年の孤独

未読
百年の孤独
出版社
出版日
2024年07月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
5.0
応用性
3.0
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おすすめポイント

それは壮大でもあり、また狭くもある物語だ。この本にはマコンドという集落とブエンディア家の話が綴られている。ホセ・アルカディオ・ブエンディアがもといた集落を追われて建てた村、マコンドは、様々な発明品がもたらされることで発展する。新たな命が生まれ、成長するにつれて恋愛や政治闘争に身を染める。世代が移り変わり、人々は人生から退場していく。読者はまるで神になったような気持ちで、矢のように過ぎ去っていくマコンドの時間を見守るのである。

物語の中心にいるのはいつも人である。かれらは読者の多くがそうであるように、恋愛や欲望、苦しみを抱きながら人生をまっとうする。登場人物の人間模様に心を動かされるのは、読者が登場人物一人ひとりの一生を見てきたからにほかならない。要するに、それほど人物の描写が丁寧で、どこか生々しいのである。

こうしたリアリティを持つ一方で、魔術めいた要素も数多く登場する。これが、マルケスを評価するときによく言及される「魔術的リアリズム」だ。絶妙なアクセントとなって、荒唐無稽にならない程度になんともいえない味付けを物語に施している。

集落が近代的な街へと発展していく様子、そこに生きる人々の精緻な人物描写、そして物語のリアルさを損ねない程度の魔術的な要素。これらを巧みに編み上げた『百年の孤独』は、なかなか得がたい読書体験を私たちに与えてくれるだろう。

※今日の観点からすれば差別的な表現もありますが、原文に忠実な翻訳の意図を汲み、そのまま掲載しています。

著者

ガブリエル・ガルシア=マルケス(Gabriel Garcia Marquez)(1927-2014)
コロンビア、アラカタカ生まれ。ボゴタ大学法学部を中退し、新聞記者となって欧州各地を転々とした後、1955年に処女作『落葉』を発表。1967年『百年の孤独』によって一躍世界が注目する作家となった。『族長の秋』『予告された殺人の記録』『コレラの時代の愛』『迷宮の将軍』など次々と歴史的傑作を刊行し、1982年にはノーベル文学賞を受賞した。

本書の要点

  • 要点
    1
    ホセ・アルカディオ・ブエンディアはいとこである妻とともにマコンドという村を開墾し、村にはさまざまな発明品を携えたジプシーがやってきて発展し、ブエンディア一族が増えていくとともに隆盛する。
  • 要点
    2
    夫婦の次男、アウレリャノ・ブエンディアは内戦の勃発とともに大佐を名乗り、野党自由党が率いる反乱軍の指揮官となってゲリラ戦に身を投じる。また、国にはアメリカ資本が到来する。
  • 要点
    3
    ブエンディア一族は徐々に衰退しはじめ、ある予言書に書かれた通りの劇的な最期を迎える。
  • 要点
    4
    ※要約は前半部分のみですが、今回に限り、名著の物語性を念頭に、書籍全体の要点を記載しています。

要約

【必読ポイント!】 マコンド建設

メルキアデス

ただの小さな村であったマコンドに文明の光をもたらしたのは、錬金術の心得があるジプシーたち、とりわけそのうちの一人であるメルキアデスだった。メルキアデスの話とその技術は、とてつもない空想力を持つ男、ホセ・アルカディオ・ブエンディアと、その子供たちを夢中にさせた。

若き指導者であった頃のホセ・アルカディオ・ブエンディアは指導者として精力的に働き、率先して社会に奉仕した。その当初のマコンドは、同規模のほかの村より勤勉で幸せな村になった。しかし、メルキアデスの技術と知識、不思議に魅了された彼は身だしなみさえ気にしない男に変わってしまった。

ある時、村にやってきたジプシーが訃報を持ってきた。メルキアデスはシンガポールで死んだという。悲しみに呆然となるホセ・アルカディオ・ブエンディアだったが、メンフィスの学者が発明した氷に初めて触れた途端、その感動でメルキアデスの死など忘れてしまった。

闘鶏と槍
Smitt/gettyimages

それはメルキアデスがマコンドに行き着く前のことだ。

新大陸生まれの男の子孫であるホセ・アルカディオ・ブエンディアは、いとこのウルスラとともに山奥の集落で育ち、そのまま婚姻関係を結ぼうとしたが、親戚たちはこぞって反対した。両家は何百年も前から血をまじえており、その末裔による近親相姦は恥ずべき結末をもたらすとされていた。実際、豚のしっぽを持つ子供を産んだという前例があった。それでも、彼はそうした心配をはねのけウルスラと結婚した。

この決断に強く抵抗したのがウルスラの母親である。生まれてくる子供にさまざまな不幸が起こると予言し、二人の交わりをウルスラに拒否させた。これは夫の不能の噂として広まり、あの運命の日曜日がやってくる。

闘鶏の賭けごとをしている時に、悲劇は起きた。賭けに負けたプルデンシオ・アギラルという男が、夫婦の関係についてホセ・アルカディオ・ブエンディアを侮辱したのである。これに興奮したホセ・アルカディオ・ブエンディアは投げ槍で彼を殺害してしまった。その夜、プルデンシオ・アギラルの通夜が行われている間じゅう、ウルスラとホセ・アルカディオ・ブエンディアはからみ合っていた。

マコンド、建つ

この一件から、ホセ・アルカディオ・ブエンディアに変化が訪れた。プルデンシオ・アギラルの亡霊が見えるようになったのである。いつまで経っても消えない亡霊に、ホセ・アルカディオ・ブエンディアはついに根負けして集落から出ていく決心をした。

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要約公開日 2024.08.25
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