新版 思考の整理学

未読
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新版 思考の整理学
出版社
出版日
2024年02月13日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

発行部数280万部を超え、「知のバイブル」として40年以上読み続けられている外山滋比古氏の『思考の整理学』。今回、2009年7月に東京大学で行われた特別講義「思考の整理学を語る」の音声テープが発見されたことから、「東大特別講義」を加えた初の増補改訂版『新版 思考の整理学』が出版されることとなった。

フライヤーではすでに『思考の整理学』を要約化しているが、今回はそのときに取り上げなかった箇所と「東大特別講義」を中心に紹介する。「グライダー人間と飛行機人間」「思考を寝かせる」「とにかく書いてみる」などの本書を代表するトピックは“旧版要約”に収められているため、そちらも目を通すとより理解しやすいだろう。

著者が本書で繰り返し説くのは「忘れること」の重要性である。忘却は人間に備わった大事な能力であり、「何を忘れて、何を覚えておくか」については各人の個性に委ねられている。コンピューター時代に人間がサバイブするには、「選択的忘却力」を駆使していらない知識を手放し、想像力と創造力を発揮することだ――。著者が執筆当時に語っていたことだが、コンピューターをAIに置き換えてみると違和感ないのが不思議である。普遍的な本質をたずさえた本書がロングセラーである所以を、あらためて実感する。

本書のファンにとっては待望の新版であり、未読の方にとっては名著を手に取るまたとない機会である。ぜひこの際に、気楽な気持ちで一読してはいかがだろうか。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

外山滋比古(とやま しげひこ)
1923年生まれ。東京文理科大学英文科卒業。『英語青年』編集長を経て、東京教育大学、お茶の水女子大学で教鞭と執る。お茶の水女子大学名誉教授。専攻の英文学に始まり、レトリック、思考法、エディターシップ論、日本語論などの分野で独創的な仕事を続けている。平明で論理的な日本語を開拓したエッセイストとしても定評がある。著書に『知的生活習慣』『「読み」の整理学』『ライフワークの思想』『アイディアのレッスン』『空気の教育』『家庭という学校』『異本論』『知的創造のヒント』『ことわざの論理』『忘却の整理学』(筑摩書房)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    朝は頭の能率が良いため、仕事は“朝飯前”に行うといい。
  • 要点
    2
    どんな考えでもほめることが大切だ。思考はほめられることで活発になる。
  • 要点
    3
    学校では正解を求める「収斂的思考」ばかりを訓練しているが、創造的な「拡散的思考」も磨かねばならない。
  • 要点
    4
    人間には“選択的に忘れる”能力がある。人間がコンピューターとわたり合うには、この「選択的忘却力」を生かし、想像力を発揮することが欠かせない。
  • 要点
    5
    思考と知識を融合することでハイブリッドな知性や理性が生まれ、新しい文化が作られる。

要約

思考の整理学

朝飯前にすること
Poike/gettyimages

夜考えることと、朝考えることはかなり違う。例えば、夜寝る前に書いた手紙を翌朝読み返してみると、「なぜこのようなことを書いてしまったのか」と不思議に思うことがある。また、夜さんざん手こずった仕事を諦めて、朝起きてからもう一度試みてみると、するすると片づいてしまう。そんな夢のようなことも珍しくない。

“朝飯前”ということばは、「それは朝飯前だ(=朝食前にできるほど簡単だ)」という風に使われるが、もともとは違う意味を持っていたのではないだろうか。簡単なことだから“朝飯前”なのではなく、「朝食前にするため、簡単ではないこともさっとできて簡単に見えてしまう」のではないだろうか。つまり、朝の頭はそれだけ能率がいいということだ。

人間は本来、朝に仕事をすることが自然なのだ。かといって、あまり早朝に起きるのも難しい。では、朝飯前にできるだけたくさんのことをするにはどうしたらいいか。その答えは、朝食を抜くことだ。

8時に起きてすぐ仕事を始め、昼に朝食兼昼食のブランチを取る。すると、お昼まではすべて“朝飯前”の時間になるから、大いに仕事ができる。

また、食後は消化に血液をとられるため、頭が働かず眠くなる。そういった意味でも、朝食を抜くのは理にかなっている。著者は、午前中は仕事に集中し、その日やることをすませてしまうという生活を20年続けている。

情報のメタ化

情報には第一次情報と第二次情報がある。第一次情報とは「自然を直接表現したもの」であり、「○○山の南側の斜面は砂走になっている」といったものだ。第二次情報はそれをふまえてより高度な抽象化を行なった“メタ”情報であり、それをさらに抽象化させると、第三次情報(“メタ・メタ”情報)ができあがる。

第一次的情報の代表はニュースである。事件や事実をそのまま伝えるが、それがどのような意味を持つかは明らかではない。新聞の社会面は第一次情報がメインだが、同じ新聞でも社説はニュースをもとに整理を加えた“メタ・ニュース”であり、第二次情報となる。

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要約公開日 2024.02.22
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