自分が払ったお金が高ければ高いほど、人は、料理や飲み物をおいしく感じるものだ。
米国スタンフォード大学のダグラス・マッコーネルは、ビール愛飲者60名に8週間の間、3種類のビールを毎日1本ずつ飲んでもらい、点数をつけるという実験を行った。ラベルに記された価格は異なっているものの、じつは中身のビールはすべて同じものだった。味がわかるなら、全部同じ点数になるはずだ。ところが、実際には価格が高いビールほど、点数が高いという結果になった。
つまり人は、それほど正しく味を理解できるわけではないのだ。価格によって目くらましをされているケースは少なくない。
価格は、味だけでなく効能にも影響を与えることがある。
スタンフォード大学のバーバ・シップは、125名の大学生を2グループに分け、「頭が冴えてくる」というエネルギードリンク飲ませた。片方のグループのドリンクには「1.89ドル」、もう片方には「0.89ドル」というラベルが貼られている。やはり中身は同じものだ。その後、双方のグループにワード・パズルを解かせた。
解いたパズルの数の平均を比較したところ、高い価格のエナジードリンクを飲んだグループが解いたパズルの数は9.7、安い価格のエナジードリンクを飲んだグループは6.75という結果になった。高い価格のエナジードリンクを飲んだグループは、本当に頭が良くなってしまったのだ。
薬にも同様に「この薬は効く」と思って服用すると、インチキな薬であっても薬効が表れてしまう「プラシボ効果」という現象がある。効くと思い込めば、本当に効いてしまうのだ。
同じ頼みごとであっても、依頼者の服装によって、引き受けてもらえるかどうかが変わることがある。人は依頼者の身なりを見て、立派な服装の人の言うことだから聞く、薄汚い格好をしているから言うことを聞かなくてもいいといった判断を瞬時にしている。
米国ウェバー州立大学のブラッド・ブッシュマンは、150名の歩行者に「小銭がなくて困っている人がいる。1ダイム恵んであげてくれないか?」と聞く実験を行なった。このとき服装だけを変え、みすぼらしい格好、スーツ、消防士の3種類の服装で同じお願いをしてみた。
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