現代はメンタルの悩みを抱える人が多い。だが、これまでメンタルヘルスの問題がオープンに語られることは少なかった。「心の不調が起きるのは、その人自身に問題がある」といった偏見を持つ人がいたからだ。
2021年の全仏オープンで、試合後の記者会見を拒否した大坂なおみ選手のことは記憶に新しいのではないだろうか。全仏オープンを含むテニスの4大大会では、選手の記者会見は義務の一つとされている。だが、大坂選手はその3日前にツイッターで「記者会見ではアスリートの心の健康状態が無視されていると感じる。試合期間中に自分を疑うような人の前に立って、自分自身が自分を疑いだしてしまうことは避けたい」と公表した。
アスリートは常に強くあることを求められるが、大坂選手はそこに一石を投じた。トップアスリートでも不安を感じるし、不安を増強させられる状況に耐えなくてもいい。そう示した彼女の勇気ある行動は、「求められることを拒んでも自分の心を守る」という新しい形の「強さ」を見せてくれた。
本書のメインテーマである「リアプレイザル(Reappraisal)」は「再評価」といい、認知行動療法の対処法の1つである。感情のコントロールに有効なことがさまざまな研究からわかっており、トップアスリートにも取り入れられている。再評価の方法を練習することで、不安や緊張をいくらか克服できるだろう。
恐怖や不安といった感情は、生きるための生存本能の1つだ。猛獣に襲われる危険があった時代は、生き延びるために闘う・逃げるといった、とっさの行動や判断をする必要があった。
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