新版 お金の減らし方

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SBクリエイティブ

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出版日
2024年06月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書の著者である森博嗣は、ベストセラー作家と呼ぶべき小説家である。

工学博士の学位を持ち、国立大学に助教授(現在の准教授)として在籍しながら小説を執筆してきたという異例の経歴の持ち主だ。そして小説を書いた動機を「お金のためのアルバイト」と語っているのだから、さらに異例である。著者は子供の服を買うにも事欠くようなお金のない生活も経験したあとで、大学で1日16時間働きながら削った睡眠時間で小説を書いた。そうまでして欲しかったものとはなんだったのだろうか。本人は次のように語っている。趣味で庭に敷いた鉄道の線路をもう少し伸ばしたかった――。

著者はもともと同人誌の世界でデビュー前から作家として活動していたことが知られており、本人の弁を鵜呑みにするには留保が必要だろう。しかし趣味の庭園鉄道や飛行機模型といった分野でほとんど専門家と呼べるような知識を持ち合わせていること、そしてそういった造詣が作品にも活かされていることについては議論の余地はない。

作家になってから年収が優に1億を超え、今では1日45分しか働かないという著者が本書で考えるのは、お金を減らす方法だ。有効にお金を減らすためには、自分が欲しいと思うものを見定めなくてはならない、というのが著者の主張である。誰のためでもなく、自分のためにお金を減らすこと。果たしてそれが本当に実行できているか、ぜひ自分に問いかけてみてほしい。

ライター画像
池田明季哉

著者

森博嗣(もり ひろし)
1957年愛知県生まれ。小説家、工学博士。某国立大学の工学部助教授の傍ら1996年、『すべてがFになる』(講談社文庫)で第1回メフィスト賞を受賞し、衝撃デビュー。以後、犀川助教授・西之園萌絵のS&Mシリーズや瀬在丸紅子たちのVシリーズ、『φ(ファイ)は壊れたね』から始まるGシリーズ、『イナイ×イナイ』からのXシリーズがある。その他の著書に『女王の百年密室』(幻冬舎文庫・新潮文庫)、映画化されて話題になった『スカイ・クロラ』(中公文庫)、『トーマの心臓 Lost heart for Thoma』(メディアファクトリー)などの小説、『森博嗣のミステリィ工作室』『森博嗣の半熟セミナ博士、質問があります!』『森博嗣の半熟セミナ博士、質問があります!』(以上、講談社)などのエッセィ、ささきすばる氏との絵本『悪戯王子と猫の物語』(講談社文庫)、庭園鉄道敷設レポート『ミニチュア庭園鉄道』1~3(中公新書ラクレ)、『「やりがいのある仕事」という幻想』『夢の叶え方を知っていますか?』(以上、朝日新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか』(新潮新書)、『集中力はいらない』(SB新書)など新書も多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    お金を減らす際には、それが本当に自分の満足のために使われているかをよく考える必要がある。
  • 要点
    2
    見栄のためになにかを買ってはならない。また一見必要と思えるようなものでも、よく吟味すべきである。一方で、本当に欲しいと思うものにはお金を使うべきだ。
  • 要点
    3
    現代は自分の欲求に対して鈍感な人が増えている。自分が本当に欲しいものを見定めるためには、子供のような好奇心を持っていろいろなことに触れなくてはならない。

要約

お金とは何か?

お金は価値を測る物差し

そもそも、お金とはなんだろうか。お金とは、ものの「価値」を仮に数字にしたものであり、それ以上でも以下でもない。お金ができる前から、世の中にあるもの、物品や作業の結果などにそれぞれには「価値」があった。お金はそれを交換するための媒介にすぎないのである。

当たり前のように思われるかもしれないが、ある商品を買おうか迷っているときには、こうした認識が必要になる。五千円のバッグがあったとして、その金額はバッグそのものの価値ではない。ついている値段は、売りたい側が決めた数字にすぎない。買う側は、自分にとっての価値をそこに見出そうとする。あらゆるものは、使ってみなければ本当の価値はわからない。宣伝されている情報だけでは十分でないはずである。私たちは自分がそれを手に取ったときにどうなるかをイメージして、その価値を推測する。

このとき、本来は自分自身の満足度こそが価値となるはずだ。しかしその品物を自分が持ったときに、自分ではなく他者がどう感じるかという妄想から価値を考えてしまうことがある。他人を羨ましがらせるためにお金を使うことに、果たしてどれほどの意味があるだろうか。お金を使って手に入れる価値とは、結局は自分の欲求を満たすことのはずだ。

お金がないからできない?
LdF/gettyimages

「お金」や「時間」がないからやりたいことができないと言う人はよくいる。しかし、そういう人は実は自分のやりたいことがわかっていない場合が非常に多い。本当にやりたいことがある人は、「時間」も「お金」もなんとか工面してしまうものだ。

自分の好きなことをしている人は、自由人のように見えがちだ。時間とお金が潤沢にあるから好きなことができると思うかもしれないが、その逆だ。かなり苦労して時間やお金を生み出している。

お金は目的ではない。目的を達成するための手段としてお金がある。多額のお金を持っているだけでは、なにも良いことはない。そのお金を欲しいもの、やりたいことと交換してはじめて、価値が生まれるのだ。言い換えれば、お金は失ってはじめて価値が生まれるといえる。

自分の好きなことがやりたいからこそ、人はお金を減らす。お金が溜まったというのは、一時的な仮の状態にすぎない。お金はたくさんあったほうがよいことに間違いはないが、それはより大きく減らすことが可能になるからなのである。

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要約公開日 2024.09.22
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