20世紀末にアメリカが、「グローバルな軍事的・経済的・文化的勢力範囲を持つ唯一の国になった状態」を、著者は「アメリカの卓越性(アメリカン・プライマシー)」と呼ぶ。そのような、アメリカの時代が作られるまでの時期に、政治リーダーはどのような影響をもたらし、彼がリーダーであることは歴史にどのようなちがいを生じさせたのだろうか。
まず、リーダーシップのあり方について考えてみよう。
近年のリーダーシップ論では、リーダーたちの目的や方法について「変革型」であることに価値をおいた見方が目立つが、これはあまりに単純な見方であるともいえる。目的は変革型であっても手法はそうではないことも多いからだ。リーダーの目標と、そこへ至るまでのやり方のスタイルを分けて考えてみることが、より正確な分析を可能にする。
まず、リーダーの目標は、現状維持から漸進型の改革を経て、大規模な変革に至るというモノサシのどこかに位置付けられる。本書では、ゆるやかな改革を行うリーダーを漸進型リーダー、大きな変革を追い求めるリーダーは変革型リーダーと呼ぶ。
もちろん、リーダーたちは問題によって変化の程度を使い分けるが、それでもやはり変革型か漸進型か、どちらかに偏る傾向がみられるという。
目標を効果的に実行するために、リーダーにはソフト・パワーのスキルと、ハード・パワーのスキルが求められる。
ソフト・パワーのスキルは、自他の感情のコントロール能力である感情的知性、魅力あるビジョンを描く能力、コミュニケーション能力などをいう。ハード・パワーのスキルは、組織能力と、脅しや買収や交渉をして勝利をつかむ同盟をつくる政治スキルである。
本書では、ソフト・パワーを使った実行スタイルを持つリーダーを、鼓舞型スタイルのリーダーと呼ぶ。一方で、ハード・パワーを使うスタイルを取引型スタイルと呼ぶ。
さらに、二つのパワー資源を組み合わせたスキルとして、状況を把握する知性(コンテクスチュアル・インテリジェンス)がある。このスキルは、つまり、集団の文化やパワー資源の状況を読み解き、ニーズや情報の流れ、タイミングを適切につかむことともいえる。状況把握の知性を備えたリーダーは、集団や状況のニーズに合わせてスタイルを変え、望ましい方向へ皆を導いていくことができる。
大統領のリーダーシップがアメリカの卓越性にどのように寄与したかを考えるにあたって、著者は、20世紀、アメリカの卓越性が拡大したと見られる4つの時期に政治を指揮した8人の大統領に注目する。要約では、その一部を紹介したい。
注目すべき時期のひとつは、冷戦初期だ。
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