大統領のリーダーシップ

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大統領のリーダーシップ
出版社
東洋経済新報社

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出版日
2014年10月17日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

著者ジョセフ・S・ナイ氏は、世界で活躍する政治リーダー養成機関、ハーバード大学ケネディスクールの元学長であり、クリントン政権では政策ブレーンを務めた。『ソフト・パワー』などの著書でその名を知る方も多いのではないだろうか。

本書は、ハーバード大学での著者の講義を土台にしたものである。アメリカを超大国へ押し上げた大統領たちのリーダーシップとはどのようなものであったのか。また、これからアメリカはどこに向かい、どのようなリーダーシップを必要としているのか。そうした問いに対する答えを導き出すべく、著者は、アメリカの卓越性(プライマシー)が拡大したと見られる時期に大統領を務めた8人――T・ルーズベルト、タフト、ウィルソン、F・ルーズベルト、トルーマン、アイゼンハワー、レーガン、ブッシュ(父)――に注目し、外交政策におけるリーダーシップを徹底的に分析する。

リーダーシップ論では、大きな変革を追求するリーダーが評価される向きが強いが、本書ではそうではない漸進型のリーダーの重要性にも多く言及している。

また、本書では、リーダーシップそのものについての知見を得られるだけでなく、当代一流の国際政治学者によるアメリカ外交政策の歴史評価を知ることができる。グローバル社会を舞台に活躍したいと願うビジネスパーソンにとって読んでおくべき重要な1冊といえるだろう。

ライター画像
熊倉沙希子

著者

ジョセフ・S・ナイ
アメリカを代表する国際政治学者で、安全保障の専門家として知られる。1958年プリンストン大学卒業、オックスフォード大学に留学し、ハーバード大学で政治学のPh.D.を取得。長年にわたりハーバード大学で教鞭をとり、1995年から2004年までハーバード大学ケネディスクール(行政大学院)の学長を務めた。ハーバード大学特別功労教授。クリントン政権では国家情報会議議長と国防次官補を務めた。リチャード・アーミテージらと超党派で「アーミテージ・レポート」などの政策提言書も発表している。主な著書に『ソフト・パワー』、『リーダー・パワー』、『スマート・パワー』(以上、日本経済新聞出版社)、『国際紛争』(共著、有斐閣)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    リーダーシップのタイプは、その目標とスタイルを分けて考える必要がある。目標においてはどの程度の変化を追求するかによって変革型と漸進型に分けられる。
  • 要点
    2
    目標を実行するスタイルにおいては、ソフト・パワーを使う鼓舞型、ハード・パワーを使う取引型に分けられる。両方のパワーを持つことで高い状況把握の知性を備えることができ、ニーズに合わせてスタイルを変えられる。
  • 要点
    3
    変革型の大統領に負けず劣らず、漸進型の大統領もアメリカを危機から守り、繁栄へと導くことができた。

要約

リーダーシップのパターン

リーダーの目標――変革型か、漸進的か
andreync/iStock/Thinkstock

20世紀末にアメリカが、「グローバルな軍事的・経済的・文化的勢力範囲を持つ唯一の国になった状態」を、著者は「アメリカの卓越性(アメリカン・プライマシー)」と呼ぶ。そのような、アメリカの時代が作られるまでの時期に、政治リーダーはどのような影響をもたらし、彼がリーダーであることは歴史にどのようなちがいを生じさせたのだろうか。

まず、リーダーシップのあり方について考えてみよう。

近年のリーダーシップ論では、リーダーたちの目的や方法について「変革型」であることに価値をおいた見方が目立つが、これはあまりに単純な見方であるともいえる。目的は変革型であっても手法はそうではないことも多いからだ。リーダーの目標と、そこへ至るまでのやり方のスタイルを分けて考えてみることが、より正確な分析を可能にする。

まず、リーダーの目標は、現状維持から漸進型の改革を経て、大規模な変革に至るというモノサシのどこかに位置付けられる。本書では、ゆるやかな改革を行うリーダーを漸進型リーダー、大きな変革を追い求めるリーダーは変革型リーダーと呼ぶ。

もちろん、リーダーたちは問題によって変化の程度を使い分けるが、それでもやはり変革型か漸進型か、どちらかに偏る傾向がみられるという。

リーダーの実行スタイル――鼓舞型か、取引型か
Kritchanut/iStock/Thinkstock

目標を効果的に実行するために、リーダーにはソフト・パワーのスキルと、ハード・パワーのスキルが求められる。

ソフト・パワーのスキルは、自他の感情のコントロール能力である感情的知性、魅力あるビジョンを描く能力、コミュニケーション能力などをいう。ハード・パワーのスキルは、組織能力と、脅しや買収や交渉をして勝利をつかむ同盟をつくる政治スキルである。

本書では、ソフト・パワーを使った実行スタイルを持つリーダーを、鼓舞型スタイルのリーダーと呼ぶ。一方で、ハード・パワーを使うスタイルを取引型スタイルと呼ぶ。

さらに、二つのパワー資源を組み合わせたスキルとして、状況を把握する知性(コンテクスチュアル・インテリジェンス)がある。このスキルは、つまり、集団の文化やパワー資源の状況を読み解き、ニーズや情報の流れ、タイミングを適切につかむことともいえる。状況把握の知性を備えたリーダーは、集団や状況のニーズに合わせてスタイルを変え、望ましい方向へ皆を導いていくことができる。

【必読ポイント!】リーダーたちはどのくらい「効果的」だったか

卓越性とリーダーシップ

大統領のリーダーシップがアメリカの卓越性にどのように寄与したかを考えるにあたって、著者は、20世紀、アメリカの卓越性が拡大したと見られる4つの時期に政治を指揮した8人の大統領に注目する。要約では、その一部を紹介したい。

ドワイト・D・アイゼンハワー
asafta/iStock/Thinkstock

注目すべき時期のひとつは、冷戦初期だ。

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要約公開日 2015.02.20
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