ビジネスを行ううえでとくに重要なのは、「継続的に利益をもたらす顧客」と「一過性の顧客」を区別し、両者の違いを検証することだ。よくプロダクトを買ってくださる人と、プロダクトを買っていたのに途中から離れてしまった人、プロダクトを知ってはいるけれども買ったことのない人を比べ、その差異を把握する必要がある。こうした違いを見ることなく「PV(ページビュー)を上げるにはどうしたらいいか」「課金率を上げるには、どうしたらいいのか」「売上を達成するためにはどうしたらいいか」といったことばかり考えていると、お客様はそれらを達成するための「ただの数字の塊(マス)」になってしまう。
マーケティングで機能するアイデアを導き出すためには、実在する1人のお客様(N1)に焦点をあて、その人の詳細を深く理解することが重要だ。はじめてプロダクトの便益を認知したときの心の動き、あるいはリピートしたときのきっかけを「N1分析」で見つけ、顧客戦略の起点にするのだ。
誰かにプレゼントを贈るときのことを考えてみよう。次の3つの選択肢のうち最も喜んでもらえる自信があるのは、どのケースだろう?
(1)自分の子やパートナー
(2)自分の同僚10人
(3)4年制大学の学部を卒業し、現在、首都圏に居住する年収400万~500万円の独身女性
成功する確率が高いのは断然(1)だろう。実在する1人が相手だからこそ、その人が喜んでくれるものを選びやすいはずだ。
「N1分析」もそれと同じだ。実在する1人の顧客を徹底的に理解し、その顧客が価値を見出す便益と独自性を見極めるからこそ、プロダクト開発やコミュニケーションのアイデアが得られる。
「N1分析」では、インタビューによってお客様1人ひとりの趣味や嗜好、生活態度、価値観、持ち物、興味の対象などを知ると同時に、購入行動を左右しているインサイトを探っていく。
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