職場で傷つく

リーダーのための「傷つき」から始める組織開発
未読
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リーダーのための「傷つき」から始める組織開発
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職場で傷つく
出版社
出版日
2024年07月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「あんなに頑張ったのに、評価Bか」「上司が変わった途端、急に“使えない部下”扱いされるようになった」……。やりきれない思いが募り、「もう辞めちゃおうかな」と思う。それでも次の日は平気な顔をして出社して、ため息をつきながらも淡々と仕事をこなす。

このとき、おそらく心は「傷ついている」。でも、それを口外するのは憚られるし、自分の無能をさらすようで恥ずかしい。職場にそれを言える雰囲気もない――。このような思いを抱えている人は相当数いるはずだが、職場での「傷つき」は「なかったこと」にされてしまう。なぜか?

本書はそんな、あるのに見えない「職場の傷つき」に着目し、組織開発の視点から紐解いていく意欲作だ。著者は『「能力」の生きづらさをほぐす』で注目される、気鋭のコンサルタント・勅使川原真衣さん。勅使川原さんは現代社会にばっこする「能力主義」や「自己責任」に一石を投じ、組織のあるべき姿を探っている。

著者によると、「職場の傷つき」がなかったことにされる裏には、能力主義が関わっているという。昨今は年功序列など従来型の組織モデルが崩れ、「主体性」「協調性」「リーダーシップ」といった個人の「能力」が評価基準となった。しかし、「能力」は職務や環境や人間関係によって、いとも簡単に変化する。本書では、「能力」評価に頼りすぎる危うさを指摘し、それに代わる解を導き出す。

もしあなたが、今の職場に得体の知れないモヤモヤを感じているなら、ぜひ本書を開いてほしい。その答えが見つかるかもしれない。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

勅使川原真衣(てしがわら まい)
1982年横浜生まれ。東京大学大学院教育学研究科修了。ボストンコンサルティンググループやヘイグループなどのコンサルティングファーム勤務を経て、独立。教育社会学と組織開発の視点から、能力主義や自己責任社会を再考している。2020年より乳がん闘病中。著書『「能力」の生きづらさをほぐす』(どく社)は紀伊國屋書店じんぶん大賞2024で第8位に。最新刊に『働くということ「能力主義」を超えて』(集英社新書)がある。だいわlоg「組織のほぐし屋」、朝日新聞デジタルRe:Ronや論壇誌「Voice」(PHP)、日経ビジネス電子版などで連載中。

本書の要点

  • 要点
    1
    職場において、大きな問題が起きる前には必ず「傷つき」がある。「職場の傷つき」はそこかしこに存在しているのに、なかったことにされている。
  • 要点
    2
    職場での「傷つき」が「個人的なこと」にされがちな背景には、「能力主義」の存在がある。
  • 要点
    3
    「職場の傷つき」を当たり前にしないためには、「人は揺れ動く存在である」「能力ではなく機能を持ち寄る」「組み合わせを考える」の3つの視点が必要だ。
  • 要点
    4
    仕事の「成果」は、「誰と×何を×どのようにやるか」と定義できる。

要約

「職場で傷つく」とはどういうことか

評価で「傷つく」
Nuthawut Somsuk/gettyimages

大手メーカー人事部課長のAさん。直属の上司である人事部長とは20年来の付き合いだが、ずっと仕事のやりにくさを感じている。

部長は悪い人ではないのだが、社長の前では態度が急変する「究極のイエスマン」だ。部長の指示に従って進めた案件も、社長の「ツルの一声」で一瞬でなくなったことは一度や二度ではない。早めに取り掛かっても反故されてしまうこともあるため、Aさんは納期ギリギリまで部長の「ファイナルアンサー」を待つようになった。

そんなAさんだが、評価面談のときに部長から「主体性、積極性に課題」と告げられた。「取り掛かりが遅すぎるんだよね。イニシアチブがとれてないというか。これじゃあ、昇格は遠いかな」――。

立場の強い側から一方的に「仕事ができない」とレッテルが貼られてしまう。これは、Aさん個人の「能力」の問題なのだろうか。

人間はお互い異なる「持ち味」を持っている。このケースは、部長とAさんの凸凹がかみ合わないために、組織としてうまくいっていない状況だ。つまり、個人の問題というより「組み合わせの問題」ではないだろうか。

著者は、この一連のすれ違いには「傷つき」があるという。こういった「職場の傷つき」はそこかしこに存在しているのに、なかったことにされている。これは問題ではないだろうか。

会社側の一方的な「評価」「処遇」に対する怒りから、訴訟に発展するケースもある。しかし、その前段階には相当な「傷つき」があったはずだ。もしその時点で〈対話〉していれば紛争に発展しなかったかもしれないのに、ほとんどの職場ではそれができていない。むしろ「目線合わせ」のための対話を申し出た時点で、「めんどくさい人フラグ」が立てられてしまうのが現状だ。

職場の日常で「傷つく」

2023年末、ダイハツ工業の不正問題が明るみになった。ダイハツは試験実施時の不正加工や調整、試験データの捏造・改ざんなどを、34年にわたって続けていた。

第三者委員会の調査では「自己中心的な組織風土」が指摘された。さらに、報告書には職場の日常としてこう記されていた。「失敗したときに激しい叱責や非難」「人員不足で余裕がなく、目の前の仕事をこなすことでいっぱい」「スケジュールは綱渡り日程でミスが許されない」……。さらに、「自分で考えろ」が職場の頻出ワードだったという。

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要約公開日 2024.12.27
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