老害脳

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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2024年10月18日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

世界でトップクラスの「長寿大国」となった日本。それ自体は喜ばしいことだが、高齢者の増加にともない、高齢者が引き起こすさまざまな事件や社会問題も増えている。身近なところでは、店員や窓口担当者に怒鳴ったり理不尽な要求をしたりするカスタマーハラスメント。また政治の世界では、老年政治家が権力を牛耳り、若手との世代交代が進まないことも問題視されている。世の中ではこのような現象をひっくるめて「老害」と呼んでいる。

できれば自分は「老害」になりたくない……。ほとんどの人はそう思うだろうが、残念ながら誰もが「老害」になる可能性がある。本書によると、その理由は「脳の老化」だ。脳の機能が衰えていくことで、人の話を聞かない、感情的になりやすい、過去に固執して新しいことを受け入れない……といった「老害」の症状が現れるのだという。

本書では、脳科学者の著者が「老害脳」に陥りやすい環境や生活習慣を指摘し、脳の老化を食い止める具体策を提案する。著者の加藤俊徳氏は、『脳の強化書』『1万人以上の脳を見た名医が教える すごい左利き』など、脳に関する著書を多数世に送り出している脳のエキスパートだ。特に、脳をエリア別に分けた「脳番地」を活用した能力開発や脳機能の向上策は、幅広い世代に支持されている。

本書では、「老害脳」にならないための脳番地別強化テクニックも紹介する。ぜひ日々の生活で実践し、今から脳の老化予防に取り組んでいただきたい。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

加藤俊徳(かとう としのり)
脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。 昭和大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。脳番地トレーニング、脳活性助詞強調おんどく法を開発・普及。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。現在、加藤式MRI脳画像診断法(脳相及び脳個性診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。脳の成長段階、強み弱みを診断し、学習指導、適職相談など薬だけに頼らない脳が良くなる治療を行う。著書に、『1万人の脳を見た名医が教える すごい 左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続ける もっとすごい脳の使い方』(サンマーク出版)など多数。※「脳番地」(商標登録第5056139/第5264859)は脳の学校の登録商標です。
加藤式MRI脳画像診断をご希望の方は、以下のサイトをご覧ください。

加藤プラチナクリニック公式サイト
https://nobanchi.com

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちの脳は、社会課題に少なからず影響を与えている。
  • 要点
    2
    脳は役割に応じて8つのエリアに分けられ、それぞれ『脳番地』と呼ばれる。各番地が衰えると、さまざまな「老害」の兆候が出てくる。
  • 要点
    3
    45歳から75歳が「脳の中年期」だ。脳の老化を抑えるには、この時期に脳機能を強化する必要がある。
  • 要点
    4
    思考系脳番地を鍛えるには、意図的に新しいことに取り組むといい。感情系脳番地は、「自分で自分をほめる」ことで強化される。

要約

社会と人を疲弊させる「老害」

左脳・右脳から見る「老害」現象
kazuma seki/gettyimages

「老害」はどのように生み出されるのか。右脳と左脳の視点から考えてみたい。

一般的に脳は、周囲の情報を処理する右脳と、自身の状況を言語で認識する左脳に分けられる。「老害脳」もこれと同じく、「右脳老害」と「左脳老害」の2種類に分類できる。

「右脳老害」は、周囲に同調した行動を生みやすく、組織の悪しき慣習を踏襲する行為がこれに当たる。

「左脳老害」は、自己中心的な視点から生じる。過去の成功体験にこだわる、新しいアイデアを受け入れられない、一方的に怒鳴りつけるなど、自分の意見を押し付ける行為が多くなる。

組織内に「老害」がはびこると、それに同調する人たちの「右脳老害」化が始まる。その人たちが組織に居続け、権限が大きくなると「左脳老害」をまき散らすようになる。すると組織全体が「老害」化し、不正や偽装などの組織犯罪が起こる危険性も高まってしまう。

「老害脳」を生み出しやすい日本社会

日本社会は秩序や肩書きを重んじ、年長者を敬う文化がある。著者はこの文化が、「老害」の発生やまん延をさせやすくしている要因のひとつだと考える。

脳の仕組みは社会の構造や状況に影響を受けるが、逆に脳が社会のあり方を決め、加速させている側面もある。私たちの脳は、社会課題に少なからず影響を与えているのだ。

その顕著な例が、トップ選びの基準である。日本人はトップを選ぶとき、安定性や前例を重視する傾向がある。日本は比較的平和なため人々の危機意識が低い。脳科学的には、思考停止に陥りやすい状態にあると言える。

また、各界のリーダー層には高齢者が多い。彼らが「老害」的な振る舞いをしても反対せずに黙っていることが、日本では美徳とされる。これでは世代交代が進まず、社会も活性化しない。それどころか、「見て見ぬふり」をしている「被害者」側の「右脳老害」化も進んでしまう。

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要約公開日 2024.12.22
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