仕事でもプライベートでも、人間関係で軋轢や気持ちのすれ違いが起きるのは当然だろう。中でも、繊細さを備えた人は傷つく度合いが大きい。例えば、少しぶっきらぼうな対応をされただけで、相手に嫌われていると思い込んでしまう。その結果、相手を避けたり、人づきあい自体が苦手になったりすることもある。一方、図太い人は相手の言動に対していい意味で鈍感、おおらかである。胸に刺さる言葉も気にかけない。図太い人はなぜ、そんな振る舞いができるのか。
そもそも人間関係を結んでいる相手に対して、明確な悪意を持って接することはあまりないはずだ。心ないと響く言葉は、うっかり口が滑って出た可能性が高い。そこに悪意をかぎ取るのは過剰反応だ。
著者の尊敬する板橋興宗禅師は、カチンと来たら、深い呼吸を数回し、「ありがとさん」と心の中で三度唱えるのだそうだ。すると怒りの感情が静まっていく。深呼吸をして「平気、平気」などというのもよいだろう。この流儀が身につくと、相手の言動をおおらかに受け止められるようになる。
おおらかさと繊細さはよい人間関係を深めるための両輪だ。本書でいうところの図太さは、繊細ささえも大いなる魅力に変えてくれる。
物事を実行する際、熟慮することは大切に思える。一方で、禅の考え方では「禅即行動」という言葉もある。とにかくまず動きなさいと教えるのだ。考えすぎたら動けなくなるからだ。
例えば仕事でアポイントを取る際も、相手が大物だと、考えすぎる傾向がある。相手の立場や状況を慮ることは必要だ。しかし、それにもさじ加減がある。配慮しすぎると、腰が引けて一歩も進めない。一方、動くと何らかの反応があり、相手との縁がつながる。すぐに行動できる怖いもの知らずは、熟慮タイプにはるかに勝る。無鉄砲な人には、考えすぎる人にはない、がむしゃらな勢いがある。
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