気遣いの「遣(つかう)」という漢字には、「思いを伝える」「心をはたらかせる」という意味があるという。他者の心情に思いをはせ、寄り添うのが「気遣い」なのだ。
著者が現役CA(客室乗務員)だったとき、お客様への気遣いが素晴らしい先輩がいた。いつもなら搭乗口でにこやかにお出迎えの挨拶をするところ、先輩は笑顔をすっと消した。その先を見ると、喪服姿のお客様が目に入った。そのお客様に向けて、先輩は静かに頭を下げて挨拶をしていたのだ。
挨拶は手段であって目的ではない。さまざまな境遇にいるお客様に対して想像を巡らせ、さりげない行動に思いを忍ばせる。新人CAだった著者は、その姿に「気遣い」の本質を見出した。
優秀な店員さんほど、お客様への声かけが早いという。最初に声をかける動作を「ファーストアクション」というが、これは買ってもらうためではなく、「相手を知るため」に行うのだという。
お客様の中には、マイペースで商品を見たい人もいれば、買う気満々で来る人もいる。相手の気持ちを早い段階で把握し、個々に合わせた対応をするには、ファーストアクションが重要だ。
相手に声をかけて、その反応を感じ取ること。「早め」のアクションは、何よりの「気遣い」なのである。
「気遣い」は、相手に褒められるためにするものではない。もし気を遣うことに疲れているのなら、それは「見返り」を求める気持ちが先行しているのかもしれない。
著者はかつて先輩CAに気を遣い過ぎて、余計なことをして怒られることがたびたびあった。「できない人」と思われたくないがために、先回りし過ぎていたのだ。
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